自己破産したくてもできない場合もある?相談する前に知っておきたい2つの自己破産できないケース

「自己破産の申請をすれば誰でも借金がチャラになるんじゃないの?」「自己破産したくてもできないケースはあるの?」と疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。

自己破産には借金が帳消しにならない(免責されない)ケースも存在します。
ここでは、自己破産を申請しても免責されない2つのケースについてご紹介します。

ケース① 免責不許可事由

自己破産で免責されないケースの1つは「免責不許可事由」に該当する場合です。

免責不許可事由とは?

免責不許可事由とは「破産法252条で定められている免責許可が降りない理由のこと」。大きく以下の8つに分けることができます。

  • 事由① 破産前に資産を廉価で売却
  • 事由② ヤミ金やクレジットカードの現金化
  • 事由③ 返済義務がないのに自己破産の直前に完済する
  • 事由④ ギャンブルや浪費、投資などで借金を作った
  • 事由⑤ 破産前に嘘をついてお金を借りる
  • 事由⑥ 裁判所に虚偽の債権者一覧表を作る
  • 事由⑦ 裁判所や破産管財人に協力しない
  • 事由⑧ 過去7年に自己破産した経験がある

一つずつ見ていきましょう。

事由① 破産前に資産を廉価で売却

破産者が自己破産の前に自分の持っている資産(家や車など)を廉価で売却すると、免責不許可事由になる場合があります。
このような行為のことを「詐害行為(さがいこうい)」と呼びます。

詐害行為には3パターンある

この詐害行為には、大きく分けて以下の3パターンがあります。

1. 本来よりも安い金額で譲渡・売却するパターン
2. 無償で他人に譲渡・贈与するパターン
3. 適正価格をもらって譲渡・売却するパターン

特に1と2は詐害行為になりやすいと言われています。3に関しては、原則免責されますが例外としてNGになるケースもあります。

事由② ヤミ金やクレジットカードの現金化

自己破産をする前にヤミ金からお金を借りたり、クレジットカードの枠を現金化すると、免責不許可事由になることもあります。
他にもクレジットカードを使って、アマゾンのギフトカードや新幹線の回数券、ギフトカードを購入し、それを現金化させた場合も同様です。

さらにその現金を使ってしまったケースだと詐欺罪になることもあります。

事由③ 返済義務がないのに自己破産の直前に完済する

自己破産の申請をして、債権者に通知が送られた後で特定の知人(友人や家族、上司など)に返済義務が無いのにも関わらず、借金を返済してしまうことを指します。
偏波弁財(へんぱべんざい)と呼ばれますが、これは破産法違反であり、該当した場合は免責不許可になるケースもあります。

ただ、偏頗弁済がすべて免責不許可になるわけではなく、例えば返済期日が3月の場合で、友人だけに先に2月に返済してしまう行為などが該当します。

事由④ ギャンブルや浪費、投資などで借金を作った

ギャンブルや浪費・投資などで作った借金の場合は、免責不許可事由に該当すると言われています。

例えば、競馬やパチンコなどで多額の借金をした場合や、キャバクラやホスト通い、身の丈を超えたゴージャスな生活による借金、投資で失敗をして借金を背負った場合などが該当します。

しかし、実情としては破産管財人の指導の下で毎月の収支を記録したり、裁判所に反省文を提出し、誠意や反省の意を見せることで「裁量免責」になることがほとんどです。

事由⑤ 破産前に嘘をついてお金を借りる

自己破産の前に嘘をついてお金を借りると免責不許可事由になります。いわゆる「詐術による借入」と呼ばれるものです。

例えば自分の財産状況や収入について嘘の申告をしてお金を借りたり、氏名や住所などを偽って借入するケースなどです。

事由⑥ 裁判所に虚偽の債権者一覧表を作る

破産申し立てを行う場合は、債権者一覧表を作成します。
これは債権者や保証人の名前と住所を記載したリストのこと。

例えば、このリストの中に「友人から50万円借りたのに記載しなかった」などの場合は、虚偽の債権者一覧表を作ることとなります。

ただ、うっかり記入し忘れた場合などは免責不許可事由にはなりませんが、非免責債権(免除されない債権)として処理されます。

事由⑦ 裁判所や破産管財人に協力しない

自己破産を進める場合、前提として裁判所や破産管財人、また債権者に対して「誠実な対応」が求められます。

例えば債務者が裁判所に出頭しなければならないときに、特別な理由が無く欠席したり、裁判官からの質問に無視したり、虚偽の答えをしたりすると免責不許可事由になる場合があります。

また、持ち家や車の任意売却を拒むなどの行為も免責不許可事由となります。

事由⑧ 過去7年に自己破産した経験がある

過去7年以内に自己破産した経験があると免責不許可になるケースがあります。

ただ、絶対にNGというわけではなく、裁量免責になる場合ももちろんあります。
他に過去7年以内で個人再生を行った場合も免責不許可になる場合もあります。

主に以上の8つのケースの場合、免責不許可になることもあり、自己破産したくてもできないケースに陥ってしまいます。

しかし、実情としては事由④の「ギャンブルや浪費、投資などで借金を作った」ケースや、事由⑧の「過去7年に自己破産した経験がある」のように、免責不許可事由でも裁量免責という形で、免責許可が降りるケースもあります。

この裁量免責についてもう少し詳しく触れてみましょう。

裁量免責とは?

破産法252条2項の記載に「前項の規定にかかわらず,同項各号に掲げる事由のいずれかに該当する場合であっても,裁判所は,破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは,免責許可の決定をすることができる。」という記述があります。

つまり、免責不許可事由に該当する場合でも、申立者が反省の意を表したり、誠実な対応を示す場合においては、免責許可になるケースが多くあります。

「免責不許可事由でも自己破産できる?4つの事例と合わせて紹介」
に詳しく書いています

免責不許可になる割合は多く見積もっても2%しかない

最高裁判所の統計資料によると、平成23年度における自己破産の総件数において、免責不許可事由になる割合は0.16%程度です。

自己破産の既済件数が10万7,879件のうち、免責許可が降りたケースは10万5,169件、そのうち免責不許可事由は174件と、およそ0.16%です。

ただそれ以外にも取り下げを裁判所から指示されたものもあり、それが全件数のうち2%程度であることから、多く見積もっても免責不許可である割合は全体のうち2%ほどしかありません。

免責不許可事由の人こそ専門家に相談すべき

このように「自分は免責不許可だから自己破産は諦めよう」「たぶん自己破産できないから他の手段を考えよう」と考えるのではなく、免責不許可事由である場合でも裁量免責が多いことから、免責不許可だと思われる人こそ専門家に相談すると解決の糸口が見つかります。

以上、自己破産ができない1つのケースについて紹介しました。
その他にも自己破産を行うことによって職業制限などが発生し、事実上選択肢として難しいケースについてご紹介します。

ケース② 職業制限などで事実上選択が難しい

自己破産することによって、職業制限が発生します。
では、どのような職業に制限がかかるのでしょうか。

自己破産による職業制限
士業

● 弁護士
● 弁理士
● 司法書士
● 土地家屋調査士
● 不動産鑑定士
● 公認会計士
● 税理士
● 行政書士
● 通関士
● 宅地建物取引士

公務員の委員長や委員

● 公証人
● 人事院の人事官
● 都道府県公安委員会
● 公正取引委員会
● 教育委員会

団体企業の役員

● 商工会議所
● 金融商品取引業
● 信用金庫
● 日本銀行
● 労働派遣業

一定の業種

● 割賦購入あっせん業者の役員
● 貸金業者の登録者
● 質屋を営む者
● 旅行業務取扱の登録者や管理者
● 生命保険募集人
● 警備業者の責任者や警備員
● 建築業を営む者
● 下水道処理施設維持管理業者
● 風俗業管理者
● 廃棄物処理業者(一般・産業・特別管理産業)
● 調教師や騎手

上記のような職業の場合、自己破産をすると制限が発生します。

職業制限が発生するのは自己破産手続き中のみ

自己破産を行うと上記職種の職業制限は発生しますが、その制限は自己破産手続き中のみです。
手続きが終了するとその制限は解かれます。

自己破産できない場合の対処法

もし、自己破産したいのに、どうしてもできない場合は他の手段を考える必要があります。
選択肢としては「任意整理・個人再生」などの他の債務整理手段を使うのも一つです。

任意整理や個人再生などの債務整理

任意整理は法律で定められた手続きとは異なるため、免責不許可事由などはありません。
ただ、借金が高額な場合は使えないケースもあります。

個人再生は裁判所に強制的に借金を減額してもらう手続き。自己破産とは基準が異なるため、自己破産できなくても個人再生ができる場合もあります。

悩む場合は専門家に相談を

自己破産は免責不許可事由でも裁量免責になったり、自己破産が難しくても他の手段が使えたりなど解決策は色々あります。
自分一人で決めつけるのではなく、専門家に相談するのが一番です。