免責不許可事由があっても自己破産できる?|裁量免責が認められる4つの事例と合わせて紹介
- 「免責不許可事由だと自己破産できないって聞いたんだけど・・・」
- 「借金の負担が大きくてなんとか自己破産したいけど、免責不許可事由のような気がする・・・」
- 「ギャンブルで浪費して借金を作ってしまったけど、自己破産できるのだろうか・・・」
- 「以前に自己破産してしまったけど、もう一度自己破産出来るのか気になる・・・」
浪費やギャンブル、二回目の自己破産など免責不許可事由がある場合は、原則自己破産することはできませんが、例外として自己破産できるケースも存在します。
ここでは、「免責不許可事由でも自己破産ができた事例」を紹介します。
そもそも免責不許可事由があっても自己破産できるのか?
そもそも免責不許可事由があっても自己破産できるのか、というと100%できる訳ではなく、「出来る可能性がある」という表現の方が適切でしょう。
その前にまず「免責不許可事由とはなにか」ということについて紹介します。
免責不許可事由とは?
免責不許可事由とは「破産法252条で定められている免責許可が降りない理由のこと」。大きく以下の8つに分けることができます。
- 事由① 破産前に資産を廉価で売却
- 事由② ヤミ金やクレジットカードの現金化
- 事由③ 返済義務がないのに自己破産の直前に完済する
- 事由④ ギャンブルや浪費、投資などで借金を作った
- 事由⑤ 破産前に嘘をついてお金を借りる
- 事由⑥ 裁判所に虚偽の債権者一覧表を作る
- 事由⑦ 裁判所や破産管財人に協力しない
- 事由⑧ 過去7年に自己破産した経験がある
もう少し各事由について知りたい場合は、
「自己破産したくてもできない場合もある?|免責不許可事由や職業制限のため自己破産ができないケース」
を御覧ください。
免責不許可事由でも自己破産できる可能性はある
原則的に上記8つの免責不許可事由に該当する場合は、免責許可が降りません(自己破産ができません)。
ただし、免責不許可事由の場合でも裁判所が申立者の事情を考慮し、免責を与えるケースも存在します。これを「裁量免責」と呼びます。
裁量免責とは?
破産法252条2項で免責不許可事由に該当するようなケースでも、「裁判所は,破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは,免責許可の決定をすることができる。」と規定しています。これを裁量免責と呼びます。
免責許可が降りる割合
「裁量免責になるって言っても少ないんじゃないの?」
「いくら免責になると言っても、割合が少なければ意味がない」
「どれくらい裁量免責になるの?」
自己破産する方にとって、どれくらいの割合で裁量免責になるかは気になるところでしょう。
実際は浪費などの免責不許可事由があっても、免責許可となる方がほとんどです。
2020年の日弁連の調査結果によると、 自己破産の免責申立てをした人1240人のうち免責不許可となった人は0%でした(2000年調査以降,「免責不許可」は1%未満で推移しています)。
このように裁判所が免責不許可とする割合はとても少ないですが、免責不許可の可能性が高い場合には、裁判所からの勧めに応じて、破産の申立て自体を取り下げているケースが一定程度含まれていることに注意が必要です。
※参考資料:2020年破産事件及び個人再生事件記録調査報告編|日本弁護士連合会
「免責許可が降りやすいことはわかったけど、実際にどんなケースで裁量免責になったの?」
「免責不許可事由があっても、どのような場合だと免責が降りるの?」
「自分が裁量免責になる可能性があるかどうかを知りたい」
では、実際にどのようなケースで免責不許可事由でも裁量免責になったのでしょうか。
以降、免責不許可事由でも免責を許可されることがある事例を4つご紹介します。
免責不許可事由でも自己破産できた事例4つ
① ちょっとした嘘をついて借入していた
原則的に自分の収入や資産について嘘をついて、借入れをしたり、ローンを組んで物品を購入した場合などは、免責の許可は降りません。
しかし、嘘の程度が低い場合には、裁量免責が認められる可能性が高くなります。
収入や職業を偽って消費者金融で借入した場合は、軽微な詐称として裁量免責されることも多いでしょう。
② パチンコ・競馬などで借金をしていた
通常パチンコや競馬などでの借入は免責不許可事由に該当しますが、その程度が軽く、債務者に反省の意が認められる場合は裁量免責になるケースが多いでしょう。
反省の意とは、ギャンブルをやめて、生活を改善しようとする意思が見えるようなケースです。
③ 飲酒と競輪で借金が返せなくなった
生活保護を受給している債務者が飲酒と競輪で借金を背負ったが、病気のため収入を得られる見込みがなく、生活再建のためには免責を許可する他ないような場合は、本人の反省の意思も踏まえて、裁量免責が認められる余地があります。
④ 2回目の自己破産
過去7年以内に自己破産し、免責許可決定を受けている場合は、免責不許可事由に当たります。
もっとも、2度目の自己破産であっても、絶対に自己破産できないと考える必要はありません。
まず、7年を超えた再度の自己破産申立は直ちに免責不許可事由となるものではありません。
7年以内の再度の自己破産も、債務を負担した事情にやむを得ない面があり、2回目の破産を十分に反省している場合などは、裁量免責が認められる余地があるでしょう。
このように免責不許可事由があっても裁量免責になるケースも多々あります。
免責不許可事由があっても裁量免責になる場合としては、反省の意が見える場合などを記載しましたが、その他にはどういったポイントが存在するのでしょうか。
裁量免責が認められるポイント
今後収入を得る見込みがない
高齢であったり、重い病気や怪我などで就労できる見込みが非常に低い場合は、就労できない(=今後収入を得る見込みが無い)と判断されます。
この場合、返済が不可能であると認められるため、免責不許可事由でも裁量免責になるケースがあります。
更生しようと努力している
例えば破産手続きに誠意を持って対応するなど、破産者自身に更生しようと努力していることが見える場合、免責不許可事由があっても裁量免責になる可能性が高くなります。
事案によっては反省文を提出することによってそれが認められるケースが存在します。
被害者の可能性もある
自己破産の原因である借金やカードの無理な借入が、破産者だけでなく他にも責任があると認められるケースでは、裁量免責になる可能性があります。
例えばマルチ商法やデート商法、内職商法や結婚詐欺などの場合です。
破産者が被害者である(と想定される)ようなケースでは裁量免責になる可能性があります。
債権者から異議がない
自己破産を申立した場合、債権者は異議申し立てをする権利を有しています。
しかし、債権者が異議申し立ての意思を表明しない場合は、裁量免責が認められやすくなるでしょう。
免責不許可事由があっても自己破産できる可能性は高い
実際の運用として、自己破産を申し立てする場合は、免責不許可事由が余程のものでない限り、裁量免責になる可能性はかなり高いと言えます。
裁量免責にならないケースというのは、生活を自ら努力して立て直そうとする意思が見えない、破産手続きに全く協力しない、免責不許可事由があまりにもひどい場合などに限定されます。
つまり免責不許可事由に該当するようなケースであっても、その免責不許可事由に該当する行為があまりに酷いものでなければ、自ら努力して生活を立て直そうとする、破産手続きにしっかりと協力することで裁量免責になるのです。
「実際に自分の場合は免責不許可事由になるのか」「免責不許可事由になりそうなケースだけど、裁量免責になるのか」など、どのケースになるか気になる方もいらっしゃるでしょう。
インターネットでいくら調べても、専門家に聞いてもらわない限りは前に進みません。その間も督促状が届いたり、催促の電話がかかってきます。
まずは平穏を取り戻すためにも、専門家に相談し、自己破産ができるかどうかを聞いてみましょう。
(記事更新日 2024.3.29)