自己破産するとどうなるのか?自己破産後の影響について教えて下さい(その①…自己破産後の財産)

自己破産とは、借金があなたの返済能力を超えてしまった場合に、裁判所に申し立てて借金の返済を免除してもらって、生活を建て直していく制度です。

借金の返済義務を免れることを「免責」と言います。

では、自己破産をすると、その後の生活はどうなるのでしょうか?

自己破産という言葉を知っていても、具体的な内容は知らない人がほとんどです。自己破産を考えている人で気になるのは「自己破産後の生活や財産がどうなるか?」でしょう。

自己破産には誤解が多く、デメリットがあるイメージもありますが、実際には非常に大きなメリットを持つ救済制度です。

以下では、自己破産後の“財産への影響”と自己破産後の“生活・家族への影響”の2回に分けて、まずは“財産への影響”について分かりやすく説明します。

「その②…自己破産後の生活、家族等への影響」はこちら


自己破産したら財産や生活はどうなりますか?家族や保証人に迷惑がかかりますか?


自己破産には、すべての財産を失ってしまうようなイメージがありますが、「生活を建て直していく」ための制度ですので、ある程度の財産は守られます。

自己破産後も、原則として仕事を続けられますし、自己破産後の生活が大きく制約されるようなこともありません。

また、自己破産すると家族に借金が請求されるようなこともありません。

もっとも、一部の職業(生命保険募集員など)は自己破産の手続の期間中は業務に就くことができません。また、主たる債務者が自己破産すると、保証人に請求されることになりますので、自己破産の手続きをする前に、保証人の方にもご相談することが望ましいでしょう。

このように自己破産後の生活や財産については色々な影響が考えられますので、自己破産のよくある疑問をご紹介いたします。



①自己破産すると財産はどうなりますか?

破産者に財産がある場合、その財産は破産手続きで換価され,破産者の負債の弁済に充てられることが原則ではあります。

しかし,個人破産の場合,破産者の財産が全て負債の弁済に充てられてしまえば,破産者の生活再建にも支障が生じることになります。

そこで,破産法は,破産者の生活維持のため,一定の財産を破産者の手元に残すことができる財産として認めています。破産者の手元に残すことができる財産を「自由財産」と呼びます(e-Gov法令検索「破産法」34条4項)。

よって、自己破産しても無一文になるわけでなく、一定の財産を手元に残すことができます。
どの財産をどれだけ残すことができるかは、自己破産の手続の種類裁判所の運用によって異なります。

個人の自己破産では、自由財産(最大99万円の範囲内)を処分せずに手元に残すことができますので、無一文になることはありません。

注)手元に残せる自由財産の範囲は、破産手続きの種類(同時廃止か管財手続きか)などによって変わってきますので、詳しくは弁護士に自己破産を依頼する際に確認されるといいでしょう。


銀行の預金はどうなりますか?

個人の自己破産では、他の財産と合わせて、預金が自由財産(最大99万円)の範囲内に収まれば、預金の解約の必要はありません。

自由財産の範囲を超える預金がある場合であっても、その超過額を出金して破産管財人に引き渡せば、預金の解約まで求められることはないでしょう。

ただし、預金のある銀行に借金もある場合(例えば、普通預金を開設している銀行のカードローンを利用している場合)には、破産申立の準備に入る受任通知を発送すれば、銀行は預金を凍結し、借入金と預金を相殺しますので、注意が必要です。

また、会社などの法人の破産については、法人名義の預金は破産管財人の処分対象となりますので、預金口座は解約されます。

なお、自己破産後に、新たに銀行口座を開設することは特に問題なく可能です。

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自宅はどうなりますか?

持ち家などの不動産については、自己破産をしても保持できる自由財産とは認められません。

そのため、持ち家のある人が自己破産をした場合は、住宅ローン債権者である銀行によって持ち家の競売申立てがなされるか、破産管財人が売却することになります。

破産者と同居のご家族は持ち家に住めなくなりますので、賃貸住宅などへの引っ越しを要することになり、生活面で影響を受けることになります。

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敷金はどうなりますか?

賃借しているマンションや居宅の敷金・保証金は自由財産と認められることが多いでしょう。

敷金の財産評価に当たっては、①滞納賃料のほか、②将来の原状回復・明渡費用等として60万円が差し引かれますので、敷金の財産価値はないと評価されることが多いでしょう。

そのため、自己破産をしても賃料の滞納がない場合には、多くの場合、そのまま賃借物件に住み続けることができますし、敷金が処分されることもありません。

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車はどうなりますか?

自動車が処分対象になるかどうかは、自動車の評価額によります。

自動車の評価は査定評価額によりますが、他の財産と合わせて、自動車が自由財産(最大99万円)の範囲内に収まれば、自動車を手元に残したまま、自己破産を進めることができます。

国産の普通自動車で初年度登録から7年、軽自動車で5年以上経過している車両については、裁判所の運用にもよりますが、査定評価を受けることなく0円と評価されることが多いでしょう。

反対に、車の評価額が高額であり、自由財産として認められない場合には、自己破産によって車を手放すことになります。

車のローンが残っている場合は、車両ローンが完済されるまで、ローン会社が車両の所有者となっていることが多く、これを所有権留保といいます。

自己破産をする場合で、車のローンが残っており所有権留保があるときは、車はローン会社に引き揚げられますので、車を手元に残すことはできません。

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生命保険はどうなりますか?

保険が処分対象になるかどうかは、解約した場合の保険解約返戻金の評価額によります。

保険解約返戻金が、他の財産と合わせて自由財産(最大99万円)の範囲内に収まれば、保険を解約することなく、自己破産を進めることができます。

また、仮に保険解約返戻金と他の財産の合計が自由財産(最大99万円)を超える場合であっても、例えば、自由財産の超過額を破産管財人に引き渡せば、保険の解約をする必要はありません。

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給料はどうなりますか?

多くの場合は、自己破産前と変わらず、給料を全額受け取ることができます。 自己破産をしても、将来の給料が奪われるという心配はありません。

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退職金はどうなりますか?

退職金が処分対象になるかどうかは、退職金の評価額によります。

退職金の評価額は、破産開始時に退職したと仮定した場合の自己都合による退職金支給見込額の8分の1相当額をもって評価されます。

なお、退職金支給見込額は、勤務先から(破産開始時での)退職金証明書を発行してもらうか、退職金規程などで計算することになります。

この退職金評価額が、他の財産と合わせて自由財産(最大99万円)の範囲内に収まれば、自己破産によって退職金が処分される心配はありません。

そのため、自己破産のために仕事を辞める必要はなく、退職金がよほど高額でない限り、影響を受けることはありません。

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年金はどうなりますか?

国民年金や厚生年金などの年金を受給している場合、これらの年金の受給権は差押禁止とされています。そのため、自己破産をしたとしても、年金が差し押さえられることはなく、今までどおり、年金を受給することができます。

国民年金や厚生年金は、自己破産しても変わりなく受け取れることができますので、ご安心ください。

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自己破産後の財産への影響のまとめ


自己破産をすると、全ての財産を失ってしまうようなイメージがありますが、自己破産後の生活を立て直していくために、ある程度の財産は守られます。

最大で99万円の範囲内で自由財産が認められますので、現実には、破産費用以外には、自己破産によって手持ちの財産を失う場合の方が少ないでしょう。

自己破産後も、原則として仕事を続けられますし、自己破産後の生活が大きく制約されるようなこともありません。

自己破産後の財産や生活への影響について色々と心配な方もいらっしゃると思いますが、その心配事は不正確な情報に基づく誤解であることも少なくありません。

他方で、自己破産には、借金の負担から解放されて、生活のやり直しを進めることができるという大きなメリットがあります。

そのため、自己破産を検討されている方は、一人で悩むよりも自己破産に強い弁護士に何でも相談してみるといいでしょう。

→(続き)「その②…自己破産後の生活、家族等への影響」はこちら

(記事更新日 2024.5.4)

この記事の監修者
弁護士 白川 謙三

弁護士 白川 謙三(大阪弁護士会所属)
大阪・北浜の平野町綜合法律事務所代表
弁護士21年目。債務整理、自己破産、個人再生、過払い金請求などの解決事例多数。
ご相談に真摯に耳を傾け、ご希望の沿った解決をサポートします。借金問題のご相談は無料ですので、ぜひお気軽にお問合せください。

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