自己破産をしたら持ち家や車はどうなりますか?

自己破産をした場合、持ち家や車を手放さなければならないのか、不安な方も多いと思います。

結論から申し上げますと、持ち家は高額な財産であり、自由財産には含まれませんから、破産管財人による売却や競売によって処分されることが原則です。そのため、自己破産後はご自宅を手放すことになるのが一般的です。

他方で、自動車は手元に残すことができる場合があり、資産価値がない車であり、既にローンも完済しているような場合は、自己破産によっても自動車を手元に残すことができるでしょう。

以下では、自己破産をしたら持ち家や車がどうなるかについて、詳しく説明していきます。


自己破産しても手元に残せる財産


持ち家と車について説明する前に、自己破産しても手元に残せる財産はどのようにして決まってくるかについて説明しましょう。

自己破産とは、多額の借金を抱えた個人や法人(会社)が、自ら裁判所へ破産の申立てをし、借金や財産を清算したうえで、残った借金の返済が免除される手続きのことを言います。

要するに、自己破産とは、手持ちの財産を失う代わりに、借金をすべて帳消しにする手続きです。

ただし、自己破産をすることで、全く無一文になると生活ができなくなります。
そのため、自己破産をしても、破産者の生活再建のため、最大99万円の財産を所持したまま自己破産することが認められています。

そして、自己破産をしても手元に残せる財産の範囲は、破産手続きの種類によって変わってきます。破産手続きには、同時廃止管財事件の2種類があります。

同時廃止とは?



自己破産をする人に財産がほとんどない場合(生活に必要最低限の財産しかない場合)、債権者に財産を分配することはできません。

そのため、裁判所は破産手続開始の決定と同時に、破産手続廃止の決定をします(廃止とは終了という意味です)。これを「同時廃止」と呼びます。

同時廃止は基本的に書面審査で手続きが完了する簡便な手続きであり、費用も比較的安く済みます。

大阪地方裁判所の運用では、同時廃止は、財産が以下の①及び②の範囲に留まる場合に認められます。

① 現金及び普通預貯金 :その合計額が50万円以下である必要があります。
② その他の個別財産 :例えば、保険解約返戻金や自動車などの個別財産については、個別財産ごとの合計額が20万円未満である必要があります。

同時廃止の場合には、①及び②の範囲の財産は自己破産をしても手元に残すことができます。

管財事件とは?



破産する人にある程度の財産があり、同時廃止で手続きを進めることができない場合は、破産管財人が選任される管財事件として自己破産の申立てをします。

管財事件の場合は、破産管財人が選任され、債権者集会が開かれるなど、同時廃止と比べてやや複雑な手続きとなります。

管財事件で自己破産しても残せる財産のことを「自由財産」と呼びます。
自由財産には、「本来的自由財産」と「自由財産拡張制度」により拡張される財産があります。

「本来的自由財産」には、以下のようなものがあります。

● 99万円以下の金銭
● 金銭以外で差押が禁止された財産
● 自己破産後に新しく手に入れた財産

「自由財産拡張制度」
本来的自由財産以外にも、事情を考慮しその枠を拡張することができます。これは「自由財産拡張制度」と呼びます。

自由財産の拡張は、①拡張適格財産について、②現金及び拡張適格財産の合計額が99万円以下の場合は、原則的に自由財産として認められます。 
現金とともに99万円の範囲内で自由財産の拡張が認められる拡張適格財産には、以下のようなものがあります。

● 預貯金・積立金
● 保険解約返戻金
● 自動車
● 敷金・保証金返還請求権
● 退職金債権
● 電話加入権
● 過払い金返還請求権

以上のとおり自由財産の拡張が認められますので、管財事件では、概ね現金、預金、その他の財産を合わせて99万円の範囲内で自由財産が認められると考えてもらっていいでしょう。

このように自己破産しても、無一文になるわけではなく、一定の範囲で手元に財産を残すことができます。

以下では、自己破産をしたら持ち家や車はどうなるかについて詳しく見ていきましょう。


自己破産をしたら持ち家はどうなる?


持ち家があると原則として管財事件になる



自己破産をする人が所有する持ち家がある場合、原則として管財事件となります。

そして、不動産は自由財産(拡張適格財産)とは認められず、持ち家は破産管財人によって売却されることになります。破産管財人が売却できなかった持ち家については、住宅ローンを貸している金融機関が競売の申立てをすることになります。

そのため、自己破産後はご自宅を手放すことになり、住み続けることはできなくなるのが一般的です。

持ち家があっても同時廃止が認められる場合



持ち家に住宅ローンの担保権(抵当権)が設定されていて、残りの住宅ローンがその持ち家の価値を大幅に上回っている状態(オーバーローン状態)であれば、同時廃止となることもあります。

オーバーローンが明らかな場合には、抵当権の実行(競売)による売却代金の全額が住宅ローン債権者に優先的に返済され、他の債権者の配当に回ることはありません。

このように破産申立時点で他の債権者の配当に回らないことが明らかであれば、わざわざ破産管財人を選任することは無意味ですので、同時廃止の手続きで自己破産をすることが認められます。

どの程度の住宅ローンがあれば、管財事件ではなく同時廃止が認められるかは、各裁判所の運用に委ねられています。

例えば、大阪地方裁判所では、住宅ローンの残額が、不動産の固定資産評価額の2倍を超えるときは、同時廃止での申立てが認められます。

同時廃止にしてもらえれば、破産管財人の費用が必要ないので、その分費用も安く済み、自己破産の手続きも比較的簡単なものになります。

もっとも、同時廃止になっても、破産手続きとは別に、住宅ローン債権者(抵当権者)によって持ち家の競売の申立てをされますので、やはり住み続けることはできなくなるのが一般的です。

自己破産以外で持ち家に住む続ける方法



自己破産をすると、一般的に持ち家を手放さなければならなくなりますが、自己破産以外の方法で持ち家に住み続ける方法もあります。

借金の整理の方法については、自己破産以外に個人再生債務整理という手続きがあります。
また、例えば親族に持ち家を相場で買い取ってもらって、住み続けることができる場合もあります。

【個人再生による解決】

個人再生とは、住宅ローンを除く借金を原則5分の1に圧縮し(ただし、100万円未満には圧縮できず、かつ、破産となった場合の予想配当総額を下回ることはできない)、圧縮された借金を原則3年で分割返済する制度を言います。

個人再生は住宅を所有したまま、住宅ローン以外の借金の圧縮を図るのに適した制度と言えます。

個人再生では、住宅ローンの返済について住宅資金特別条項を定めることができます。
住宅ローンについては、原則として当初の住宅ローン契約の返済計画で返済することになりますが、再生計画の中で、住宅ローンの返済条件や返済期間を変更することも可能です。

【債務整理による解決】

債務整理とは、サラ金やクレジット会社と任意に交渉して、債務の返済総額や返済条件・期間を見直し和解をする制度を言います。

債務整理では、利息制限法の利息で引き直し計算をして、減額された元本の分割返済を約し、かつ、その元本の分割返済に当たっては将来の利息が付かないように和解することになります。

例えば、利息の引き直し計算の結果、借入元本が50万円残る場合、その50万円を毎月1万円ずつ50回にわたって返済することを合意し、その50回の分割返済中には利息が付かないことになります。

債務整理で借金の月々の返済額を減らし、住宅ローンは今まで通り支払って、住宅に住み続けることも考えられるでしょう。

【親族などに持ち家を買い取ってもらう方法】

どうしても持ち家に住み続けたいのであれば、資金のある親族などに、相場価格で持ち家を購入してもらい、その親族から家を貸してもらうことで住み続けるという方法もあります。

この場合に気を付けることは、適正な価格(市場の相場価格)で持ち家を買い取ってもらうことです。適正な価格でなければ、破産管財人や住宅ローン債権者(金融機関)の同意が得られず、持ち家の売却はうまく行かないでしょう。

親族が買い取った家に住まわせてもらえれば、持ち家は自分の所有ではなくなりますが、今のマイホームに住み続けることが可能になります。家賃の支払いを要するかどうかは、親族との話し合い次第となるでしょう。


自己破産したら車はどうなる?


自己破産をしたら車はどうなるのでしょうか?まずは車のローンが残っている場合と残っていない場合で取り扱いが変わってきます。

車のローンが残っている場合



車のローンが残っている場合は、車両ローンが完済されるまで、ローン会社が車両の所有者となっていることが多いでしょう。これを所有権留保といい、普通自動車の車検証の所有者欄にもローン会社名やディ―ラーの会社名が記載されています(注:軽自動車は扱いが異なります)

自己破産をする場合で、車のローンが残っており所有権留保があるときは、車はローン会社に引き揚げられますので、車を手元に残すことはできません。

もっとも、銀行のマイカーローンなどは所有権留保がありませんので、実際に車を引き揚げられるか否かは弁護士に相談してみるといいでしょう。

自己破産しても車を手元に残せる場合



ローン会社の所有権留保がない場合に、車を手元に残せるかどうかは、車の資産価値によって判断されることになります。

車の評価額はレッドブックや査定資料により判断します。もっとも、大阪地方裁判所の運用では、①日本製の普通自動車であれば、初年度登録から7年を超え、新車時の車両本体価格が300万円未満の場合と、②軽自動車であれば、初年度登録から5年を超える場合は、それぞれ無価値(資産価値はない)と判断されます。

よって、①②に当たる場合は、自己破産をしても自動車を手元に残すことができます。

①②に当たらない場合でも、車の査定資料などによって、車の評価額が低い場合は自由財産として手元に残すことができます。

同時廃止の場合であれば車の評価額が20万円未満、管財事件の場合は預貯金等の他の財産と合わせて99万円以内である場合は、車を自由財産とすることができますので、手元に残すことができるでしょう。


自己破産と持ち家・車のまとめ


いかがでしたでしょうか?

自己破産をしても無一文になるわけではなく、生活再建に必要な範囲で財産を手元に残すことができます。しかし、持ち家については高額な財産であり、自由財産には含まれませんので、破産管財人による売却や競売によって処分されることが原則です。

そのため、自己破産後はご自宅を手放すことになりますので、どうしてもご自宅を手放したくない場合は、個人再生や債務整理を検討してみるといいでしょう。

他方で、自動車は手元に残すことができる場合があり、資産価値がない車であり、既にローンも完済しているような場合は、自己破産によっても自動車を手元に残すことができるでしょう。

借金の返済に困っていて、持ち家や自動車のことで悩んでいらっしゃる方は、自己破産や借金問題に強い弁護士に相談されることをおすすめします。

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