借金の消滅時効とは?|成立条件・手続き・援用の注意点を弁護士が徹底解説
「5年以上前の借金の督促状が届いた」
「昔の借金を放置しているが、いつまでも借金はなくならないの?」
自分の古い借金について、このような不安を抱えている方もいらっしゃると思います。
借金には「消滅時効」という制度があり、一定期間が経過すれば法的に返済義務を消滅させられる可能性があります。
しかし、単に時間が過ぎるのを待つだけでは解決しません。むしろ、不用意な行動一つで時効が台無しになり、遅延損害金を含めた高額な請求を受けるリスクもあります。
この記事では、消滅時効の仕組みから2020年の民法改正によるルールの違い、消滅時効の成立に必要な4つの条件、そして、消滅時効の効果を発生させる「時効援用」の手続きについて、詳しく解説していきます。
・借金の消滅時効とは?
・消滅時効の期間は何年?「5年」か「10年」かの判断基準
・借金の時効の起算点
・消滅時効が成立するための4つの条件
・条件1:時効期間(5年または10年)が経過している
・条件2:時効の「更新(中断)」がない
・条件3:時効の「完成猶予」がない
・条件4:「時効の援用」を行う
・自分の借金が時効かどうかを調べる5つの方法
・時効援用ができない場合の借金解決策(債務整理)
・任意整理による解決
・個人再生による解決
・自己破産による解決
・借金の消滅時効のまとめ
借金の消滅時効とは?
消滅時効とは、債権者が一定期間権利を行使しない場合に、その権利を消滅させる制度です。
借金に当てはめると、債権者(お金を貸した側)が請求をせず、債務者(借りた側)も返済しないまま一定期間が過ぎた場合、借金の返済義務を法的に消滅させることができます。
この消滅時効制度は、民法第166条に定められています。
債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。
消滅時効は「権利の上に眠る者は保護しない」という法格言に基づき、長期間にわたり権利を行使しなかった債権者の権利を消滅させる制度です。
また、消滅時効制度は、時間の経過により証拠が散逸した後に生じる紛争の蒸し返しを防いで、法的安定を図ることを目的としています。
消滅時効の期間は何年?「5年」か「10年」かの判断基準
借金の時効期間は原則として5年ですが、借入の時期や相手によって10年となるケースもあります。
時効期間の判断基準は、2020年(令和2年)4月1日の改正民法施行が大きな分かれ目となります。
2020年4月1日以降の借入れの時効期間
民法改正により、2020年4月1日以降の借入れについては、以下のいずれか早い方が経過した時点で時効が完成します。
| 2020年4月1日以降の借入れの時効期間 | |
|---|---|
| • 債権者が権利を行使できることを知った時から | 5年 |
| • 権利を行使できる時から | 10年 |
銀行や消費者金融などのプロの業者は、返済期限を正確に把握しているため、基本的には「返済期限から5年」で時効となります。
2020年3月31日以前の借入れの時効期間
民法改正前の2020年3月31日以前の借入れについては、以下のルールが適用されます。
| 2020年3月31日以前の借入れの時効期間 | |
|---|---|
| • 銀行・消費者金融・クレジットカード会社 | 5年 |
| • 信用金庫・労働金庫・奨学金(営利目的でない団体) | 10年 |
| • 個人間の借金(友人や親族) | 10年 |
ただし、民法改正後は、信用金庫や個人間の借金も原則として5年に統一されています。
判決が確定した場合の借入金の消滅時効
時効期間の進行中に債権者が裁判所に対して訴訟を提起した場合は「裁判上の請求」にあたり、時効の更新事由となります。
そして、最終的に判決が確定した場合には、もともとの期間に関わらず時効期間が「10年」に延長される点に注意が必要です。
確定判決だけでなく、確定判決と同一の効力を有する訴訟上の和解調書や家事調停調書、確定した仮執行宣言付の支払督促などによっても、時効期間は10年に延長されます。
確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、十年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、十年とする。
借金の時効の起算点
時効の起算点(きさんてん)とは、時効期間のカウントが始まる時点のことです。この起算点がいつになるかによって、時効が完成する時期が変わってきます。簡単に言うと、「いつから数え始めるか」というスタート地点のことです。
時効は「権利を行使することができる時」から起算します。
そのため、借金の時効の起算点は、弁済期となります。
ここでいう弁済期とは、お金を借りた日ではなく、借金の返済日のことです。
例えば、令和8年6月30日に返すことになっている借金であれば、令和8年6月30日がスタートとなります。
ただし、民法には「初日不算入の原則」というルールもあります。このルールによって、実際には、約束した日の翌日が時効の起算点となります。
この例では、令和8年6月30日の翌日である令和8年7月1日が時効の起算点ということになります。
借金の消滅時効の起算点をまとめると、次のとおりとなります。
| 借金の消滅時効の起算点 | |
|---|---|
| 一括払いの場合 | 返済日の翌日 |
| 分割払いの場合 | 原則として分割払いの各支払期日の翌日 ただし、一度でも滞納して「期限の利益を喪失(全額一括払いの義務が発生)」した場合は、その翌日から残金すべての時効が進行する。 |
| 弁済期の定めのない場合 | 返済期限が決まっていない借入金は、いつでも返済を請求できるので、債権が成立した時(借入れをした時)が消滅時効の起算点となる。 |
消滅時効が成立するための4つの条件
借金の返済義務が消滅する「消滅時効」が認められるためには、単に時間が経てばよいというわけではありません。以下の4つの条件をすべて満たす必要があります。
1. 時効期間(5年または10年)が経過していること
2. 時効の「更新(中断)」がないこと
3. 時効の「完成猶予」がないこと
4. 「時効の援用」を行うこと
条件1:時効期間(5年または10年)が経過している
これまで述べたとおり、借金の消滅時効が成立するためには、起算点から法律で定められた時効期間(5年または10年)が経過している必要があります。
2020年(令和2年)4月1日の民法改正後は、借金の消滅時効期間は5年になることが多いでしょう。
条件2:時効の「更新(中断)」がない
時効の更新(旧民法では「中断」)とは、特定の事由によって進行中の時効期間がゼロに戻り、また最初からカウントし直しになることを言います。
更新があると、時効の進行が途中で止まって、時効の期間が始めに巻き戻ってしまいます。
例えば、消費者金融から借金をしている場合、最終返済日から3年後に一部の返済(債務の承認)をして時効の更新が起きてしまうと、その時点からさらに5年が経過しないと、時効が成立しなくなってしまいます。
そのため、時効援用をするときには、途中で時効が更新していないかをしっかり確認しなければなりません。
時効の更新事由は以下の3つとなります。
| 時効の更新事由 | |
|---|---|
| 裁判上の請求 (民法第147条) |
債権者が訴訟や支払督促を申し立てること。
確定判決や確定した仮執行宣言付の支払督促などによって、時効期間は10年になります。 |
| 強制執行 (民法第148条) |
給与の差押え、預金口座の差押えなど。 手続き終了後に新たに時効が始まります。 |
| 権利の承認 (民法第152条) |
債務者が借金の存在を認めること。 |
それでは、具体的にどのようなことがあったら時効の更新になるのでしょうか。 以下では、代表的な時効更新事由として、「裁判上の請求」と「債務の承認」について説明します。
時効期間経過後の裁判上の請求に対する注意点
時効期間を経過した後、裁判所から訴状や支払督促を受け取った場合、どうすればいいのでしょうか。
この場合は、既に時効期間が経過していますので、裁判上の手続きの中で時効を援用することになります。時効の援用により借金の支払義務は消滅しますので、多くの場合は、訴訟や支払督促は取り下げられることになります。
反対に、裁判所からの書類を放置して判決が確定してしまうと、時効の援用を主張できなくなり、債権者からの請求を拒めなくなってしまいます。
そのため、時効期間が経過した借金について裁判所から訴状や支払督促が届いた場合は、弁護士に早めに相談して、裁判上の手続きで時効の援用を主張すべきでしょう。
債務の承認に該当するNG行動や注意点
債務の承認とは、「私には債務(借金)があります」と認めてしまうことです。
時効の進行中に債務者が債務承認をすると、借金の時効は更新により当初に巻き戻ってしまいます。
債務の承認が成立するのは、「借金があります」と認める場合だけではありません。借金の一部を支払った場合にも、債務承認になってしまいます。
では、時効期間を過ぎてから、一部弁済をした場合はどうでしょうか。
最高裁判所の判例によると、時効期間を過ぎてしまっている借金でも返済してしまうと、時効援用することができなくなり、そこから時効期間の巻き戻しが始まってしまいます。
一部の債権者は、時効期間が経過していることを知りながら、時効の援用権を喪失させるため、数千円など少額の一部弁済を迫ってくるということもあります。
このように時効期間が経過していることを知りながら、一部の弁済を迫る債権者に数千円など少額を支払ってしまった場合は、そのような債権者のやり口を権利濫用として争う余地もあります。
しかし、そもそも借金を長期間支払っておらず、時効期間が経過しているような場合は、相手からどんなに頼まれても、たとえ1円でも支払うべきではありません。
弁護士に早めに相談して、時効の成立の有無を判断してもらい、時効の援用を通知してもらうことが望ましいでしょう。
条件3:時効の「完成猶予」がない
時効の成立には、期間の経過と更新事由がないことに加え、「時効の完成猶予」にあたる事由がないことも必要です。
時効の完成猶予とは、一定期間時効の成立をストップさせる「一時停止」の制度です。
時効期間が始めに巻き戻って、最初からカウントされる「時効の更新」とは異なります。
時効の完成が猶予される主な事由は以下の通りです。
| 時効の完成猶予事由 | |
|---|---|
| 催告 (民法第150条) |
内容証明郵便等で返済を催促されると、その時から6ヶ月間は時効が完成しません。 この猶予期間中に貸金業者は裁判の準備をします。 |
| 仮差押え・仮処分 (民法第149条) |
財産の保全手続きがなされると、手続き終了後から6ヶ月間、時効の完成が猶予されます。 |
| 協議を行う旨の合意 (民法第151条) |
書面で話し合いに合意した場合、最大1年間、時効の完成が猶予されます。 |
条件4:「時効の援用」を行う
借金の消滅時効は、単に時効期間が経過すれば時効が成立して借金が消滅する、というわけではありません。
「時効の援用」という手続きをしてはじめて借金の支払義務がなくなります。反対に言えば、時効の援用をするまでは借金は残っていますので、債権者はいつまでも請求書や督促状を送り続けてくることになります。
時効の援用とは「借金の時効期間が経過したので、時効による利益を受けます」という意思表示を債権者に伝えることです。
時効の援用によって、はじめて借金の支払義務が消滅するという時効の効力が発生することになります。これによって、債権者からの督促も止まることになります。
時効は、当事者(消滅時効にあっては、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含む。)が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。
時効の援用の方法については、証拠を残すため、債権者に対し内容証明郵便で「時効援用通知書」を送る方法が一般的です。
時効援用通知書には、次の項目を記載することによって、どの借金について消滅時効を援用するかを明確にすることができます。
1. 差出人と受取人の情報(住所・氏名など)
2. 契約を特定する情報(契約番号、借入日など)
3. 時効期間が経過している事実の指摘
4. 消滅時効を援用する旨の明確な意思表示
以上のとおり、
2. 時効の「更新(中断)」がないこと
3. 時効の「完成猶予」がないこと
4. 「時効の援用」を行うこと
という4つの条件を満たすことにより、「消滅時効」により借金の返済義務が消滅することになります。
自分の借金が時効かどうかを調べる5つの方法
借金の時効が成立しているかどうかを調べる方法としては、次の5つの方法があります。
「もしかして時効かも?」と思ったら、以下の方法で確認してみましょう。
・手元の書類を確認
・債権者からの督促状・請求書・催告書を確認
・信用情報機関に情報開示請求をする
・裁判所からの通知を確認
・弁護士に調査を依頼
手元の書類を確認
借金の時効を確認するためには、まず手元に残っている関連書類を確認することが有効です。
具体的には、契約書・借用書・利用明細などを確認するといいでしょう。
これらにより「最終返済日」や「返済期日」を確認すれば、時効期間がいつからカウントされるか(起算点)を特定することができ、時効期間の経過の有無を確認することができます。
債権者からの督促状・請求書・催告書を確認
督促状・請求書・催告書にも「最終返済日」や「返済期日」が記載されていることが多く、時効期間の経過の有無を確認することができます。
また、「訴訟等法的手続きの準備に入らざるを得ません」といった今後の裁判手続きを予告する文言があるか、または、既に訴訟や支払督促などの裁判手続きが完了している旨の記載があるかについても注意深くチェックする必要があります。
これらの記載は、時効の起算点や、時効の更新・完成猶予事由の有無を判断する上で有力な資料となります。
信用情報機関に情報開示請求をする
信用情報とは、消費者金融、クレジットカード会社、金融機関が各業界で作成している信用に関するデータベースのことをいいます。
そして、この信用情報を管理している機関のことを信用情報機関といいます。
主な信用情報機関は以下の3つになります。
| 信用情報機関 | |
|---|---|
| 信販会社・クレジットカード会社系 | 株式会社シー・アイ・シー(CIC) |
| 消費者金融系・信販会社系 | 株式会社日本信用情報機構(JICC) |
| 銀行系 | 全国銀行個人信用情報センター(KSC) |
これらの信用情報機関に情報開示請求をすることにより、契約日、最終返済日、現在の滞納状況、延滞登録の有無などを確認できますので、時効期間の経過の有無を確認するうえで有力な資料になります。
※CIC (株式会社シー・アイ・シー)のHP※JICC (株式会社日本信用情報機構)のHP
※KSC (全国銀行個人信用情報センター)のHP
裁判所からの通知を確認
これまでに解説したとおり、判決や支払督促が確定していると、時効は更新されます。
判決や支払督促は、特別送達により自宅に送達されていますので、これらの裁判書類が自宅に届いていなかったかを想い出し、探してみるといいでしょう。
判決などが確定している場合には、借金の消滅時効期間は10年に延長されます。
弁護士に調査を依頼
弁護士であれば、債権者とのやり取りを代理することができます。
弁護士は、債務の承認にはならないように注意を払いつつ、債権者とのやり取りによって、時効期間の経過の有無や時効の更新・完成猶予の有無を確認することができます。
時効援用ができない場合の借金解決策(債務整理)
時効の援用ができない場合でも、借金問題を解決する道が閉ざされたわけではありません。
弁護士が介入し、法的に借金を整理することで、借金の負担を軽減したり、返済義務そのものを免除してもらったりすることが可能です。
このような債務整理には3種類の方法があります。
任意整理による解決
任意整理とは、サラ金やクレジット会社と任意に交渉して、債務の返済総額や返済条件・期間を見直して和解をする制度を言います。
任意整理では、利息制限法所定の利息の範囲内の取引であれば、元金が減ることはありませんが、将来の利息が付かないように和解することにメリットがあります。
(※:金融機関によっては将来利息や遅延損害金をカットできないこともあります)
例えば、借入元本が50万円残る場合、その50万円を毎月1万円ずつ50回にわたって返済することを合意し、その50回の分割返済中には利息が付かないように和解することになります。
任意整理では、裁判所を通さずに当事者間の話し合いで解決を目指すため、他の債務整理手続きに比べて手続きが比較的簡易で、期間も短く済むことが多いというメリットがあります。
個人再生による解決
個人再生とは、住宅ローンを除く借金を5分の1〜10分の1に減額し(ただし、100万円未満には減額できず、かつ、破産となった場合の予想配当総額を下回ることはできない)、減額された借金を原則3年で分割返済する制度を言います。
個人再生では、借金の理由(浪費やギャンブルなど)が原則として問われにくい点や、住宅ローン返済中の持ち家を手放さずに、他の借金だけを減額できる点にメリットがあります。
自己破産による解決
自己破産とは、多額の借金を抱えた個人や法人(会社)が、自ら裁判所へ破産の申立てをし、借金や財産を清算したうえで、残った借金の返済が免除(免責)される手続きのことを言います。
要するに、自己破産とは、手持ちの財産を失う代わりに、借金をすべて帳消しにする手続きです。
個人再生や任意整理では借金がゼロにはならないことに対し、自己破産では借金がゼロになることが最大のメリットと言えるでしょう。
他方で、自己破産では、個人再生や任意整理のように住宅を残すことはできません。
また、自己破産では、浪費やギャンブルは免責不許可事由として審査されることになります。
借金の消滅時効のまとめ
借金の消滅時効を援用することは、経済的に再生するための正当な権利です。しかし、専門知識のない方が一人で判断して行動することは、時効を台無しにするリスクもあります。
むやみに債権者へ連絡をしたり、少しでも返済したりすると時効期間がリセットされる危険があるため、借金問題に強い弁護士に依頼するのがおすすめです。
そのため、「突然、知らない会社から督促状が届いた」、「裁判所から支払督促が来た」という方は、まずは弁護士の無料相談をご活用ください。
あなたの借金が本当に時効になっているのか、あるいは他の解決策がベストなのか、経験豊富な弁護士が誠実にお答えします。
消滅時効の援用によって借金に悩まされる生活から解放され、前向きな未来を取り戻すことができるでしょう。
(記事公開日 2026.1.3)


