自己破産すると必ず裁判所に出頭することになりますか?|裁判所への呼び出しを受けた場合、どのようなことを聞かれますか?
自己破産すると必ず裁判所へ行かなければならないのか、気になっていらっしゃる方も多いと思います。
お仕事もありますし、裁判所というとなんとなく怖いイメージがあるので、できるだけ裁判所へ行くのは避けたいと思っている方も多いでしょう。
自己破産の手続きは、事例によって“同時廃止”と“管財事件”のどちらかの手続きに分かれますが、どちらの場合も、弁護士に依頼することで、弁護士が代理人となってほとんどの手続きを行うことができます。
しかし、一部の手続きについては、申立人本人が裁判所から呼び出しを受けて、出頭する必要があります。
そうはいっても、弁護士も同席しますし、長時間に及ぶこともないので、心配する必要はありません。
それでは、“同時廃止”と“管財事件”に分けて、申立人本人が裁判所に出頭しなければならない場合について、説明していきます。
自己破産の手続きについて
自己破産の手続きには、“同時廃止”と“管財事件”があります。
1)同時廃止
同時廃止とは、破産手続開始時に財産がない場合、あるいは財産があっても裁判所が認める一定の基準額以下である場合に、破産手続開始の決定と同時に廃止(終了)を決定するという手続きです。
同時廃止の場合には、手持ちの財産が少額であるため、財産を所持したまま、自己破産をすることができます。また、基本的に書面審査で手続きが完了する簡便な手続きであり、費用も比較的安く済みます。
よって、できる限り同時廃止で自己破産の申立てをすることが、破産者にとっても負担が少ないと言えるでしょう。
なお、“破産手続き”は財産がないために同時廃止で終了しても、残った借金の返済を免除するかどうかを決める“免責手続き”は債権者の意見なども踏まえ、別に審理されることになります。
自己破産の手続きは「債務を免れる決定(免責決定)」により終了しますが、浪費(ギャンブル等)があるなど一定の事由(免責不許可事由)がある場合には、免責が認められないことがあります。
そのため、浪費などの免責不許可事由がある場合は、後述の口頭審査や免責審尋として、裁判所から呼び出しを受けることがあります。
※免責不許可事由の条文(破産法252条)については、”e-Gov法令検索「破産法」のページ”をご覧ください。
2)管財事件
「管財事件」とは、破産手続開始時に保有している財産が一定の基準額を超える場合(同時廃止の基準を超える場合)などに、裁判所から破産管財人が選任されて、破産管財人が破産者の財産を換価処分して、債権者への配当等を行う手続きを言います。
要するに、
① 破産者にある程度の財産があり、債権者への配当の可能性がある場合や
② 借金の原因に大きな問題(ギャンブルが著しいなど)がある場合には、
破産管財人が選任されて、管財事件になります。
管財事件の場合は、破産管財人が選任され、債権者集会が開かれるなどやや複雑な手続きとなります。
同時廃止と管財事件の区別はこちら→「自己破産の手続きの流れについて教えて下さい。」
同時廃止で裁判所に出頭する場合とは?
同時廃止の場合は、提出された破産申立書類に特に問題がない場合には、基本的に書面審査で手続きが完了することが多いです。
破産申立書類も代理人弁護士が提出しますので、破産申立時にご本人が裁判所に出頭する必要はありません。
しかし、例外的に、本人が裁判所から呼び出しを受けて、出頭しなければならない場合として、“口頭審査”と“免責審尋”があります。
1)口頭審査
口頭審査とは、自己破産の内容に問題がある場合に、破産手続開始前に期日が指定され、裁判官が事情確認や訓戒などをするために申立人本人と面談を行うことです。
口頭審査が行われる場合には、
①弁護士に依頼せずに自己破産を申し立てた
②債務額が高額である
③事業を経営している
④法人代表者である
⑤浪費などの免責不許可事由の程度が重く、同時廃止から管財手続への移行を検討する必要がある
場合などがあります。
破産手続開始決定前の口頭審査では、借金が増えて支払不能に至った原因や状況、借金や財産の状態などについて質問されます。
この口頭審査は、裁判所に破産手続開始の申立ての際に提出した書類に基づいて行われ、通常15分程度で終わることが多いです。
裁判所は口頭審査の内容を踏まえて、①破産手続きを開始するか否か、②同時廃止、管財事件のどちらの手続きにするかを決定します。
2)免責審尋
免責審尋とは、破産手続き自体は同時廃止となったものの、浪費などの問題行動がある場合に、免責許可の判断や本人を訓戒するために行う期日です。
免責審尋では、集団(約20名)で裁判官から免責不許可事由などについての説明を聞き、1人1人に簡単な質問をされることになります。これを集団免責審尋とも言います。
裁判官から質問される内容は、プライバシーの観点から個別の事情を尋ねられることはなく、簡単で基本的なことになります。また、弁護士から事前にアドバイスをしますので、心配には及びません。
免責審尋は、浪費などの問題行動について、破産者本人の自覚と反省を促す機会になると言っていいでしょう。
同時廃止の場合は、以上のような例外的な場合に限って、本人が裁判所に出頭する必要がありますが、いずれにせよ代理人である弁護士も同席するため、それほど大きな負担はありません。
管財事件で裁判所に出頭する場合とは?
管財事件においては、管財人面談と債権者集会への出頭が必要となります。
1)管財人面談
管財事件の場合は、裁判所が破産管財人(弁護士です)を選任しますので、破産手続きが開始した時に、破産管財人の事務所へ出向き、今後の進行について打合せをします。これを「管財人面談」と言います。
管財人面談では、破産管財人から借金をすることになった経緯や現在の収入、財産などについて聞かれたり、今後の手続きの流れについて打合せをします。しかし、代理人である弁護士も同席しますので、過度に緊張する必要はありません。
2)債権者集会
債権者集会とは、破産管財人が、破産者の財産や債務などについて調査した結果を債権者に報告する集会のことです。
債権者集会は裁判所で行われ、破産者本人や代理人弁護士以外に、裁判官や破産管財人が出席します。また、債権者も出席することができます。
しかし、債権者(特に金融機関)が債権者集会に出席することはむしろまれであり、債権者は集会に出席しないことがほとんどです。そのため、債権者集会は破産管財人からの簡単な報告で終わることが多いです。
また、債権者集会は、基本的に2、3か月ごとに開催されます。あまり手間のかからないケースであれば、1回目の債権者集会で破産手続きが終了し、同時に免責決定が出されることになります。
このように管財事件においては、管財人との面談に加え、少なくとも1回は必ず裁判所に行く必要があります。いずれにせよ、代理人である弁護士が事前に手続きの流れを丁寧に説明し、管財人面談や債権者集会の際には同席しますので、それほど心配する必要はありません。
自己破産と裁判所の呼び出し、出頭する場合のまとめ
いかがでしたでしょうか。このように、自己破産の手続きにおいて、申立人本人が裁判所に出頭する必要がある場合は、“同時廃止”か“管財事件”によって異なります。
同時廃止の場合は、基本的に書面審査のみで手続きが完了することになり、申立人本人が裁判所に行くのはむしろ例外です。
他方、管財事件になると、同時廃止に比べて裁判所に行く機会が増えます。しかし、代理人である弁護士も必ず同席しますので、大きな負担はありません。
自己破産を検討されており、手続きについて不安に感じていらっしゃる方は、自己破産に強い弁護士にお気軽にご相談ください。
(記事更新日 2024.11.3)