自己破産しても生活保護は受けられますか?|自己破産と生活保護申請の進め方や法テラスの利用についても解説

自己破産を検討されている方で、生活保護を受けている方や、これから生活保護の申請を考えている方もいらっしゃるかと思います。

「自己破産したら生活保護を受給できなくなるのでは?」といった誤解をお持ちの方もいらっしゃると思います。

反対に、「生活保護を受けながら自己破産をしても大丈夫?」と不安に思っている方もいらっしゃるでしょう。

結論として、自己破産と生活保護のどちらかを先にしなければならないというルールはありません。自己破産と生活保護はどちらが先でも、同時に手続きをしても全く問題はありません。

自己破産をしたからといって、生活保護申請が受理されなかったり、不利になったりすることはありませんし、生活保護受給中に自己破産をしたことで給付金の額が減額されることもありません。

以下では、自己破産と生活保護の関係についてわかりやすく紹介いたします。


自己破産と生活保護


まず最初に、自己破産と生活保護がどのような制度であるかについて、それぞれ解説します。

(1)自己破産とは?

自己破産とは、借金があなたの返済能力を超えてしまった場合に、裁判所に申し立てて借金の返済を免除してもらって、生活を建て直していく制度です。

借金の返済義務を免れることを「免責」と言います。

要するに、自己破産をすると、生活を建て直すために、借金をすべて帳消しにしてもらうことになります。

自己破産には、すべての財産を失ってしまうようなイメージがありますが、「生活を建て直していく」ための制度ですので、ある程度の財産は守られます。

自己破産後も、原則として仕事を続けられますし、自己破産後の生活が大きく制約されるようなこともありません。

*自己破産の詳しい内容についてはこちら→「自己破産とは何ですか?わかりやすく教えて下さい。」


(2)生活保護とは?

生活保護とは、生活困窮者(世帯)に、健康で文化的な最低限度の生活を保障するための制度です。

生活保護を受けるための条件は生活保護法に定められおり、条件は4つあります(生活保護法4条)。

1.資産を持っていないこと
預貯金や家・土地・車など自分の資産がある場合には、そういった資産をお金に換えて生活費に充てることが必要です。

2.能力に応じて働くことができないこと
病気・怪我・高齢などの事情で働くことができないような場合に生活保護を受けられます。

3.生活保護以外の支援制度が利用できない。
各種の年金・失業手当などを利用して、それだけで生活できる場合は、生活保護を利用できません。

4.家族や親戚などの扶養義務者から扶養(金銭的支援)を受けられない。
扶養義務者から十分な扶養を受けられず、生活ができない場合に、生活保護を受けることができます。

生活保護は、やむを得ない事情で最低限度の生活ができない人(世帯)に、最低限度の生活ができるように支援する制度です。

このように、自己破産の条件である「借金の返済が困難」である場合と生活保護の条件である「生活ができない」という条件は、具体的な場面が共通する場合があり、自己破産と生活保護は、対象者の範囲が重なる制度と言えます。

*参考:生活保護制度に関する大阪府ホームページはこちら


(3)自己破産と生活保護の関係~どちらが先か?

それでは、生活保護を受けながら自己破産をしたり、自己破産をした後に生活保護申請をすることは可能なのでしょうか?

結論から申し上げますと、可能です。
自己破産と生活保護には、どちらか一方しか選べないという制限はありません。生活保護を受けている方が自己破産をしたり、自己破産をした後に生活保護を受けることはいくらでもあります。

また、自己破産と生活保護のどちらかを先にしなければならないというルールはありません。自己破産と生活保護はどちらが先でも、同時に手続きをしても全く問題はありません。

自己破産をしたからといって、生活保護申請が受理されなかったり、不利になったりすることはありませんし、生活保護受給中に自己破産をしたことで給付金の額が減額されることもありません。

・生活保護を受けながら自己破産は可能
・自己破産をした人が生活保護を受けることも可能
・自己破産と生活保護の手続を同時にすることも可能


自己破産と生活保護を同時に進める場合


自己破産と生活保護の両方を検討していて、どちらから始めたらいいのかを迷っている方もいらっしゃるかと思います。

人によって色々な事情もありますので、どちらが良いかは弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。

ただし、自己破産と生活保護を同時に行う場合、自己破産には必要書類の準備などのため、手続を進めるには一定の期間を要します。

収入がなく生活できない状況の方は自己破産の準備中も生活しなければなりませんので、事実上生活保護の申請が先に進むことが多いでしょう。

自己破産が終わるまで生活保護の申請ができないことはありませんので、お金がなく生活できない状況にある方は、まず生活保護の申請を進めましょう。

その際に、借金のことをケースワーカーに説明すると、借金の整理をアドバイスされ、自己破産をするように指導を受けることになります。

なぜなら、生活保護費はあくまで自らの収入や資産で生活できない人の生活費のために使われる必要があり、生活保護費を借金返済に充てることは認められないからです。

ケースワーカーには、自己破産の準備中であることを説明して、生活保護申請を早めに進めてもらうようにしましょう。


生活保護を先に進める場合の注意点


自己破産よりも生活保護を先に申請する場合は、次の注意点があります。

≪注意点①≫
自己破産による借金返済の免責を受けていないため、生活保護を受けながら借金の督促を受けることになります。
生活保護費は「最低限度の生活」を営むための支援金ですので、生活保護費を借金返済に充てることは、生活保護を支給する自治体から生活保護の目的に反する利用であると判断されてしまいます。

そのため、弁護士に受任通知を発送してもらって、借金の督促を止めて、なるべく早く自己破産を進めるようにしましょう。


≪注意点②≫
生活保護申請の窓口では、先に自己破産をするように勧められることもあるため、生活保護申請がスムーズに進まないこともあります。

ただ、自己破産と生活保護申請は、対象者が重なる場合がありますが、本来は目的を異にする別々の制度ですので、生活保護申請の受理を不当に拒絶された場合には、弁護士等の専門家に相談されるとよいでしょう。

生活保護申請と同時に自己破産も準備中であることを説明すれば、借金を放置したまま生活保護申請をするような場合と比べて、生活保護申請はスムーズに受理されると考えられます。


生活保護を先に進める場合のメリット


生活保護の手続きを先に進め、申請窓口である福祉事務所等から生活保護受給決定を受けることによって、その後に自己破産を行う場合には、次のようなメリットがあります。

法テラスの費用の償還免除が受けやすくなる

生活保護を先に申請する場合、一定の条件を満たせば、自己破産の費用を免除される場合があります。

少し詳しく説明すると……

自己破産の申立には、裁判所の手数料(予納金)や弁護士や司法書士に依頼するのであれば30~50万円程度の報酬も必要になります。

そこで、自己破産の手数料や報酬を支払うことが難しい方は、日本司法支援センター(法テラス)の法律扶助制度を利用するという方法があります。

法テラス(日本司法支援センター)とは、国によって設立された法的トラブル解決のための「総合案内所」のことを言います。

法テラスは経済的に困窮されている方を対象にしており、そのサービスの一つとして、弁護士費用等の立替を受けられる法律扶助制度があります。自己破産などの多重債務の相談における利用が最も多いとされています。

この法テラスの扶助制度を利用すると、法テラスが自己破産の費用を立て替えて支払ってくれるので、収入や資産のない方でも自己破産の手続きを進めることができます。

そして、利用者は法テラスに分割で立替金の返済をしていくことになりますが、生活保護を受給中の間は立替金の返還を猶予してもらえます。そして、自己破産の手続きを終えた後も生活保護を受けている場合は、立替金の返還の免除を申請することができます。

*参考:法テラス 公式ホームページ


免責許可決定を受けやすくなる可能性がある

自己破産とは、借金があなたの返済能力を超えてしまった場合に、裁判所に申し立てて借金の返済を免除してもらって、生活を建て直していく制度です。

借金の返済義務を免れることを「免責」と言います。

生活保護を受給している場合、現時点で、自ら働いて得る収入や資産では生活することができない状況にあることは明らかです。

そして、生活保護を受給するに至った経緯には、離職や病気により働けなくなったという事情があることが多いです。

そのため、裁判所としても、生活保護の方の自己破産については、現時点で借金の返済はできず、また、そのような状況に至った経緯に離職や病気といったやむ得ない事情があることから、基本的に借金の免責を認める方向で考えることが多いでしょう。

したがって、生活保護では借金の免責許可が受けやすくなるというメリットがあります。

ただし、借金の原因が生活苦などではなく、ギャンブルなどの浪費の場合、免責不許可事由に当たるため、生活保護受給者であるからといって、絶対に免責が受けられるわけではありません。


生活保護を受けながら自己破産以外の債務整理はできない


個人の債務整理には、自己破産の他に、「個人再生」や「任意整理」という方法がありますが、借金が全額免除されるのは自己破産だけです。

個人再生や任意整理はあくまで借金を一定程度カットしたり、支払期間を見直したりすることができるにすぎません。

したがって、個人再生や任意整理の場合は、その後も借金の返済を続ける必要があります。

しかし、生活保護を受給している場合、生活保護費から借金を返済することは認められていません。

生活保護費はあくまで自らの収入や資産で生活できない人の生活費のために使われる必要があるからです。

そのため、生活保護を受給されている方は、個人再生や任意整理を利用することはできず、自己破産によって借金の免責を受けることを考えるべきでしょう。


自己破産と生活保護のまとめ


いかがでしたでしょうか?

今回は、自己破産と生活保護の関係について紹介しました。

自己破産は、借金の返済が困難になった人の借金返済を免除して、生活の建て直しを図るための制度です。
一方、生活保護は、健康で文化的な最低限度の生活を生活保護費により保障する制度です。
この2つの制度は、どちらか一方の制度しか利用できないという関係にはなく、また、利用する順番にも制限はありません。

生活保護を先にした場合、法テラスの法律扶助制度により自己破産手続きの費用が免除されることがありますが、他方で、自己破産が必要な状況での生活保護申請では、行政の窓口で自己破産によって借金を整理するように指導を受けることになるでしょう。

人によって事情は様々ですので、自己破産と生活保護をご検討の方は、一度、自己破産に強い弁護士に相談することをお勧めします。

(記事更新日 2025.1.13)

この記事の監修者
弁護士 白川 謙三

弁護士 白川 謙三(大阪弁護士会所属)
大阪・北浜の平野町綜合法律事務所代表
弁護士21年目。債務整理、自己破産、個人再生、過払い金請求などの解決事例多数。
ご相談に真摯に耳を傾け、ご希望の沿った解決をサポートします。借金問題のご相談は無料ですので、ぜひお気軽にお問合せください。

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