自己破産すると家族にバレる?バレない対処法がありますか?|ケースに応じて対処法を解説
自己破産をすると、家族にバレるかどうか、心配な方もいらっしゃると思います。
結論から言うと、家族にバレずに自己破産できることもよくあり、例えば、一人暮らしで自己破産をする場合は、実家のご両親に自己破産がバレないことの方が多いでしょう。
しかし、家族との関係性や同居の有無などによっては、家族にバレずに自己破産をすることが難しいケースもあります。
どのようなケースで家族にバレるのかを知っておけば、事前に適切に対処することができ、自己破産の家族への影響を最小限に抑えることができます。
そこで、この記事では、①自己破産が家族にバレるケース、②家族にバレる可能性があるケース、③家族にバレにくいケースに分けて紹介していきます。
・自己破産が家族にバレるケース
・家族から借金をしている場合
・家族が借金の保証人になっている場合
・破産者名義の持ち家があり、家族が同居している場合
・未成年者が自己破産をする場合
・自己破産が家族にバレる可能性があるケース
・管財事件になる場合
・同居の家族がいる場合
・ローンを組む予定がある場合
・破産者名義の高額な車がある場合
・自己破産が家族にバレにくいケース
・一人暮らしの場合
・家族と同居しているが、家計は別の場合
・官報から自己破産がバレる可能性は低い
・家族にバレずに債務整理をする方法
・自己破産と家族にバレない対処法のまとめ
自己破産が家族にバレるケース
以下に紹介する4つのケースでは、自己破産が家族にバレることになります。
その理由について、詳しく解説をしていきます。
・家族から借金をしている場合
・家族が借金の保証人になっている場合
・破産者名義の持ち家があり、家族が同居している場合
・未成年者が自己破産をする場合
家族から借金をしている場合
家族から借金をしている場合、その家族にバレずに自己破産をすることはできません。
自己破産の申立てをする際、「債権者一覧表」という書類を裁判所に提出する必要があります。
債権者一覧表には、債権者(お金を貸した人)の名前や住所、現在の債務残高(借金の残高)などが記載されています。
家族から借金をしている場合、その家族は債権者に当たるため、その家族の名前や住所を債権者一覧表に記載する必要があります。
そして、裁判所は破産手続開始決定をすると、債権者一覧表に記載された債権者に「破産手続開始決定通知書」(自己破産をしたという通知書)を発送することになります。
このため、借金をしている家族に自己破産をしたことがバレてしまいます。
このように聞くと、債権者一覧表から家族の名前を外して自己破産をすればいいのでは?と思われる方もいらっしゃると思います。
しかし、家族にバレたくないという理由で、債権者である家族の名前を債権者一覧表から外すことはできません。
なぜなら、債権者である家族の名前を債権者一覧表から外すことは、「虚偽の債権者名簿を提出したこと」として、自己破産手続きで借金の免責(免除)が認められない免責不許可事由に当たるからです(破産法252条1項7号)。
また、家族にだけ返済を続けていると、それは偏波弁済(へんぱべんさい)という免責不許可事由にも当たります(破産法252条1項3号)。
自己破産の最大の目的は、借金の免責を受けることですが、故意に家族の名前を債権者一覧表に記載せず、家族にだけ返済を続けた場合は、最終的に免責決定を受けられないことにもなりかねません。
そのため、家族にバレたくないという理由で、債権者である家族の名前を債権者一覧表から外すことは絶対にしないようにしましょう。
※免責不許可事由(破産法252条1項)の条文については、”e-Gov法令検索「破産法」のページ”をご覧ください。
家族が借金の保証人となっている場合
家族が借金の保証人(連帯保証人)となっている場合、その家族にバレずに自己破産することはできません。
なぜなら、家族が借金の保証人となっている場合、主債務者が自己破産をすると、債権者は保証人に対し、主債務者の代わりに借金を返済するように請求するからです。
この債権者からの請求がきっかけで、保証人になっている家族に自己破産をしたことがバレることになります。
また、家族が保証人となっている場合、破産手続上、その家族を債権者一覧表に記載する必要があるため、家族から借金をしている場合と同様に、裁判所からの通知により、自己破産をしたことがバレることになります。
破産者名義の持ち家があり、家族が同居している場合
破産者名義の持ち家があり、家族が同居している場合は、自己破産したことが家族にバレることは避けられないでしょう。
破産者名義の持ち家がある場合、住宅ローンの債権者である金融機関によって持ち家の競売申立てがなされるか、破産管財人によって売却されることになります。
そのため、自己破産すると、破産者と同居の家族は持ち家に住み続けることができなくなるので、自己破産したことがバレることになります。
持ち家のある方が自己破産をした場合、賃貸住宅などへの引っ越しや、場合によっては転職や転校をすることになり、家族も様々な影響を受けますので、事前によく話し合っておくことが望ましいでしょう。
未成年者が自己破産をする場合
未成年者が自己破産をする場合、親にバレずに自己破産をすることはできません。
民法上、未成年者(18歳未満の者)が「法律行為」をするには、その法定代理人となる親権者の同意が必要となります(民法5条1項)。
未成年者が弁護士と委任契約を結ぶことや自己破産を申し立てることは、この「法律行為」に当たるため、原則として、法定代理人である親の同意を得なければなりません。
そのため、未成年者が親にバレずに自己破産をすることはできません。
尚、未成年者が法定代理人の同意を得ず、借金をした場合、原則として、その契約を取り消すことができますので(民法5条2項)、自己破産をしなくても、借金をなくすことができる可能性があります。
自己破産が家族にバレる可能性があるケース
次に、自己破産が絶対に家族にバレるとはいえないまでも、家族にバレる可能性があるケースを紹介していきます。
以下のケースでは、状況によっては家族にバレずに自己破産できる場合もあります。
・管財事件になる場合
・同居の家族がいる場合
・ローンを組む予定がある場合
・破産者名義の高額な車がある場合
管財事件になる場合
自己破産の手続きには、同時廃止と管財事件があります。
同時廃止とは?
破産者の財産がほとんどなく、債権者(お金の貸主など)に配当できるような財産がないことが明らかな場合には、裁判所は、破産管財人を選ばないで、破産手続きの開始と同時に、破産の手続きを終わらせるという決定をします。
これを破産の「同時廃止」と言います。
同時廃止は基本的に書面審査で手続きが完了する簡便な手続きですので、家族にバレずに自己破産をすることができる可能性が高くなります。
管財事件とは?
「管財事件」とは、破産手続開始時に保有している財産が一定の基準額を超える場合(同時廃止の基準を超える場合)などに、裁判所から破産管財人が選任されて、破産管財人が破産者の財産を換価処分して、債権者への配当等を行う手続きを言います。
要するに、
① 破産者にある程度の財産があり、債権者への配当の可能性がある場合や
② 借金の原因に大きな問題(ギャンブルが著しいなど)がある場合には、
破産管財人が選任されて、管財事件になります。
管財事件の場合は、破産管財人が選任され、債権者集会が開かれるなどやや複雑な手続きとなります。
管財事件で家族に自己破産がバレるタイミング
管財事件になると、次のようなタイミングで自己破産が家族にバレる可能性があります。
① 破産管財人による財産の処分
② 破産管財人による財産調査
③ 破産者宛の郵便物が破産管財人に転送される
① 破産管財人による財産の処分
破産者名義の財産が、破産管財人によって処分(売却)されることで家族に自己破産がバレる可能性があります。
ただし、管財事件の場合も、破産管財人により全ての財産が処分されてしまうわけではなく、一定の範囲の財産は「自由財産」として破産者の手元に残すことができます。
概ね現金、預金、その他の財産(保険の解約返戻金や車など)を合わせて合計99万円の範囲内で自由財産が認められると考えてもらっていいでしょう。
よって、自由財産として認められる財産は破産管財人によって処分されませんので、その処分によって自己破産が家族にバレることはありません。
尚、破産者名義の車がある場合については、後で詳しく解説します。
② 破産管財人による財産調査
破産者に財産隠しが疑われるような場合、財産調査のため、破産管財人が破産者の自宅を訪問する可能性があります。
破産管財人による自宅訪問により、自己破産が家族にバレる可能性があります。
もっとも、弁護士に自己破産を依頼し、適切な破産申立てを行えば、破産管財人が自宅を訪問して財産調査をするようなことは基本的にないでしょう。
③ 破産者宛の郵便物が破産管財人に転送される
管財事件では、破産手続中は、破産者宛の郵便物は破産管財人に転送されることになります。
これは破産管財人が破産者宛に届く郵便物の内容を確認し、隠している財産がないかなどをチェックするためです。
そのため、毎月届くはずの光熱費等の請求書が届かないことで、自己破産が家族にバレる可能性があります。
また、転送された郵便物は破産管財人から返してもらえますが、その郵便物には転送シールが貼られているため、それを家族が見て、自己破産がバレる可能性があります。
もっとも、事前に光熱費などの支払方法を口座引落しに変更したり、破産管財人の事務所まで転送郵便物を直接受け取りに行くなどして、できる限り家族にバレないように対処することはできます。
同居の家族がいる場合
自己破産では、破産者と同居の家族の生活状況を確認するため、世帯全体の家計収支に関する資料の提出が求められます。
そのため、同居の家族の収入がわかる資料(給与明細書など)や家族全体の支出がわかる資料(家賃や光熱費、携帯電話料金、生命保険料などがわかる資料)を裁判所に提出する必要があります。
そのため、家族から「なぜ、このような資料が必要なのか?」を問い質され、自己破産が家族にバレることもあるでしょう。
ローンを組む予定がある場合
自己破産すると、CICやJICCといった信用情報機関に事故情報として登録されます(いわゆる「ブラックリスト」です)
そのため、自己破産をすると、ローンやクレジットカードが利用できなくなります。
約5年から7年間、利用ならび新規作成ができません。
そのため、車などをローンで購入する予定がある場合には、ローンの審査が通らないことがきっかけで、家族に自己破産をしたことがバレる可能性があります。
もっとも、信用情報機関に事故情報が登録されるのは、自己破産をした本人だけであり、その家族の信用情報には影響ありません。
そのため、破産者以外の家族は、新たにローンを組んだり、クレジットカードを契約することができます。
※CIC (株式会社シー・アイ・シー)のHP※JICC (株式会社日本信用情報機構)のHP
破産者名義の高額な車がある場合
破産者名義の車がある場合、自己破産により、車が引き揚げ・処分されることにより、家族に自己破産がバレる可能性があります。
もっとも、自己破産すると車がどうなるかは、車のローンが残っている場合と残っていない場合で取り扱いが変わります。
車のローンが残っている場合
車のローンが残っている場合は、車両ローンが完済されるまで、ローン会社が車両の所有者となっていることが多いでしょう。これを所有権留保といい、普通自動車の車検証の所有者欄にもローン会社名やディ―ラーの会社名が記載されています(注:軽自動車は扱いが異なります)
自己破産をする場合で、車のローンが残っており所有権留保があるときは、車はローン会社に引き揚げられますので、車を手元に残すことはできません。
そのため、ローン会社に車が引き揚げられるタイミングで、家族に自己破産することがバレる可能性があります。
車のローンが残っていない場合
ローン会社の所有権留保がない場合に、車を手元に残せるかどうかは、車の資産価値によって判断されることになります。
車の評価額はレッドブックや査定資料により判断します。もっとも、大阪地方裁判所の運用では、
①日本製の普通自動車であれば、初年度登録から7年を超え、新車時の車両本体価格が300万円未満の場合、
②軽自動車であれば、初年度登録から5年を超える場合は、
それぞれ無価値(資産価値はない)と判断されます。
よって、①②に当たる場合は、自己破産をしても自動車を手元に残すことができます。
①②に当たらない場合でも、車の査定資料などによって、車の評価額が低い場合は自由財産として手元に残すことができます。
同時廃止の場合であれば車の評価額が20万円未満、管財事件の場合は預貯金等の他の財産と合わせて99万円以内である場合は、車を自由財産とすることができますので、手元に残すことができるでしょう。
しかし、裏を返せば、車の資産価値が上記の自由財産の基準を超える場合には、破産管財人により、車が処分されることにより、家族に自己破産がバレる可能性があります。
このように車を手元に残せるか、家族にバレずに自己破産ができるかはケースバイケースになってきますので、詳しくは、弁護士に相談されるといいでしょう。
自己破産が家族にバレにくいケース
自己破産が家族にバレにくいケースは次のとおりです。
・一人暮らしの場合
・家族と同居しているが、家計は別の場合
・官報から自己破産がバレる可能性は低い
一人暮らしの場合
一人暮らしの場合、多くの場合は、家族にバレずに自己破産ができます。
破産者の資料以外に、別居している家族の資料が必要となることは少なく、別居家族に対して、裁判所から自己破産したことが連絡されることもないからです。
ただし、家族から借金をしている場合や家族に保証人になってもらっている場合に自己破産をすると、裁判所からその家族宛てに本人が自己破産したことの通知書が届きます。
また、自己破産した本人に代わり、保証人(家族)が債権者から請求を受けることになりますので、自己破産したことが家族にバレることになります。
家族と同居しているが、家計は別の場合
家族と同居していても、家計の収支を別にしている場合には、家族の家計に関する資料の提出を強く求められない場合もあります。
そのような場合には、家族に自己破産がバレる可能性は低くなると言えます。
もっとも、同居していても家計の収支が全く別である旨を上申書などによって、裁判所に説明する必要がありますので、弁護士に上申書の作成を依頼するといいでしょう。
官報から自己破産がバレる可能性は低い
自己破産すると、「官報」という国が発行する機関誌に、破産者の氏名や住所といった個人情報が掲載されることになります。
債権者が破産手続きに参加する機会を保障するため、破産者の情報が官報に掲載されることになっています。
しかし、官報を常日頃から読んでいる一般の方はほとんどいないといっても過言ではありません。大部分の方は官報の存在や閲覧方法すらご存じないでしょう。
そのため、官報から家族に自己破産がバレる可能性は非常に低いと言えます。
詳しい理由を知りたい方は、是非、以下の記事をご一読ください。
※自己破産と官報の解説についてはこちら→「自己破産をすると官報に掲載されますか?|官報から自己破産がバレる可能性が低い理由を解説」
家族にバレずに債務整理をする方法
どうしても家族にバレずに借金問題を解決したい場合、自己破産以外の債務整理の方法を検討する必要があります。
自己破産以外の方法としては、任意整理と個人再生があります。
任意整理による解決
どうしても家族にバレたくないのであれば、「任意整理」により借金問題を解決する方法があります。
任意整理とは、サラ金やクレジット会社と任意に交渉して、債務の返済総額や返済条件・期間を見直し和解する制度を言います。
任意整理では、利息制限法の利息で引き直し計算をして、減額された元本の分割返済を約し、かつ、その元本の分割返済に当たっては将来の利息が付かないように和解することになります。
例えば、利息の引き直し計算の結果、借入元本が50万円残る場合、その50万円を毎月1万円ずつ50回にわたって返済することを合意し、その50回の分割返済中には利息が付かないことになります。
任意整理では、債務の返済総額や返済条件・期間を見直して、毎月の返済の負担は軽くすることができます。
任意整理は、あくまで債権者1社1社と話し合って借金問題を解決する方法ですので、自己破産のように、同居の家族に資料収集(給与明細書など)の協力を求めることはありません。
そのため、どうしても家族にバレたくないのであれば、任意整理は有効な方法となります。
個人再生による解決
持ち家がある場合に自己破産すると、住宅ローンの債権者である金融機関によって持ち家の競売申立てがなされるか、破産管財人によって売却されることになります。
そのため、自己破産すると、破産者と同居の家族は持ち家に住み続けることができなくなるので、自己破産したことがバレることになります。
持ち家がある場合に借金を整理する方法としては、「個人再生」があります。
個人再生とは、住宅ローンを除く借金を原則5分の1に圧縮し(ただし、100万円未満には圧縮できず、かつ、破産となった場合の予想配当総額を下回ることはできない)、圧縮された借金を原則3年で分割返済する制度を言います。
個人再生は住宅を所有したまま(居住を続けたまま)、住宅ローン以外の借金の圧縮を図るのに適した制度と言えます。
個人再生では、住宅ローンの返済について住宅資金特別条項を定めることができます。
住宅ローンについては、原則として当初の住宅ローン契約の返済計画で返済することになりますが、再生計画の中で、住宅ローンの返済条件や返済期間を変更することも可能です。
このように、個人再生では、住宅を所有したまま、住宅ローン以外の借金の圧縮を図ることができますので、住宅が処分されるために家族にバレてしまうということはありません。
自己破産と家族にバレない対処法のまとめ
これまで述べたとおり、一人暮らしで自己破産をするような場合には、家族にバレずに自己破産できることが多いでしょう。
しかし、家族が保証人である場合や家族が同居している場合は、家族にバレずに自己破産をすることが難しいケースもあります。
どうしても家族にバレたくないのであれば、自己破産以外の、任意整理や個人再生などの方法もあります。
しかし、自己破産がバレる可能性があるようであれば、自分から正直に家族に打ち明けることも考えてみるといいでしょう。
自己破産は、自己破産を申し立てる本人の生活には大きな影響を及ぼしますが、家族に直接的な影響を及ぼすことは基本的にはありません。
自己破産について、きちんと説明すれば、ご家族も安心していただけると思います。
そのため、まずは自己破産に強い弁護士に相談し、家族にバレるケースであるか、家族に自己破産を打ち明けても問題がないかなどについて、相談することをおすすめします。
(記事公開日 2024.10.9)