自己破産は自分でもできますか?方法や必要書類は?~自己破産に強い弁護士に依頼するメリット~
借金を返済できなくなったとき、借金の返済を免れるための最終手段として、自己破産があります。
自己破産をする際、ほとんどの場合は弁護士などの専門家に依頼しますが、弁護士費用も安くはありません。
そのため、どうしても自己破産するしかない場合、できるだけ費用を安く済ませるために、「可能であれば、自己破産の手続きを自分で行おう」と考える方もいらっしゃると思います。
結論から申し上げますと、自己破産の手続きを自分で行うことは可能です。
しかし、おすすめはできません。自分で自己破産の手続きを行うのは、負担も大きく、リスクが高すぎるからです。
では、費用がかかっても、自己破産の手続きを弁護士に依頼すべきなのは、なぜでしょうか。
今回は、自己破産に強い弁護士に依頼するメリットについて解説します。
・自分で自己破産の手続きをすることはできる?
・自分で自己破産をするときの必要書類
・自分で自己破産の申立てをするリスクは?
・弁護士に依頼するメリットは?
・司法書士に依頼した場合はどうなる?
・自分で自己破産する場合と弁護士代理のメリットのまとめ
自分で自己破産の手続きをすることはできる?
弁護士に依頼しなくても、自己破産の手続きを自分で行うことは可能です。
破産法にも、自己破産の手続きを自分ですることに対して禁止する定めはありません。
しかし、自分で自己破産を行うには、申立書類の準備や債務及び財産の把握、裁判官との面談などさまざまな手続きを自分で行わなければなりません。
裁判所の受付で本人申立ての破産申立て書類を持参しても、書類の不備などが多く、結局、受付をしてもらえないことも多いと思います。
裁判所の書記官から弁護士会の法律相談センターや法テラスの紹介を受け、弁護士や司法書士などの専門家に相談することを勧められることもあります。
実際に、2020年の日弁連の調査結果によると、調査対象者1240人のうち、申立代理人なしで自己破産手続きを行った人はわずか9人(0.73%)となっています。
反対に、弁護士が代理人として受任している申立人は1123人(90.56%)であり,司法書士に依頼しているものが94人(7.58%)でした。
※参考資料:2020年破産事件及び個人再生事件記録調査報告編|日本弁護士連合会
自分で自己破産をするときの必要書類
自分で自己破産を申し立てる場合、次のような申立て書類や添付書類が必要です。
申立て書類は、管轄裁判所によって異なる可能性があるため、管轄裁判所の窓口やHPで確認するようにしましょう。
自己破産の申立て書類 |
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・破産申立書 ・債権者一覧表 ・財産目録 ・報告書 ・家計収支表 ・これらの定型書式以外にも、個々の事案に応じて、裁判所から書類の提出を求められる場合があります。 |
自己破産の添付書類 |
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・住民票 ・賃貸借契約書、居住証明書 ・預貯金通帳 ・保険証券、解約返戻金見込額証明書 ・退職金見込額証明書 ・不動産登記全部事項証明書(共同担保目録付) ・固定資産評価証明書 ・車検証または登録事項証明書 ・所得証明書 ・確定申告書 ・給与明細書 ・公的給付金受給証明書(生活保護、年金、失業保険など) ・家計の支出(光熱費など)に関する領収書 …etc. |
これらの書類一つ一つの内容についても、細かなルールがあり、自分で自己破産の申立て書類を揃えることはかなり難しい作業になります。
※自己破産の申立書類についてはこちら→「自己破産にはどのような書類が必要ですか(必要書類)?」
自分で自己破産の申立てをするリスクは?
自己破産の申立てを自分でやることには、以下のようなリスクが潜んでいます。
リスク① 時間と手間がかかる。
自分で自己破産を行うには、申立書類の準備や債務及び財産の把握、裁判官との面談などさまざまな手続きを自分で行わなければなりません。
裁判所にまで足を運ぶ必要があったり、債権者に対して通知を行う必要もあるため、かなりの手間と時間がかかります。
リスク② 貸金業者等からの取り立てが止まるまでに時間がかかる。
弁護士に自己破産を依頼すれば、依頼した時点で受任通知が送られ、貸金業者などからの取り立てもすぐに止まります。
しかし、自分で自己破産を行う場合には、すぐには取り立てを止めることができませんので、自己破産の準備が精神的に大きな負担となります。
リスク③ 自己破産できない可能性が高くなる。
破産申立てをする際には、申立書の作成と必要書類の提出が必要となります。
作成した書類に不備やミスがあると、破産手続きが開始されなかったり、調査のために破産管財人が選任される可能性が高くなります。
その結果、免責不許可事由の調査も厳しくなり、自己破産のハードルが高くなる可能性もあります。
このように、自分で自己破産をしようとすると、様々なリスクを伴い、大きな負担となります。
弁護士に依頼するメリットは?
それでは、自己破産を弁護士に依頼した場合のメリットについて説明します。
メリット① 受任後、貸金業者等からの取り立てが止まる。
ご自身で自己破産の申立てを行おうとした場合、借金の督促を受けながら、申立書類の作成や資料収集を行うことになります。
しかし、弁護士に依頼すれば、借金の返済が出来なくても、貸金業者等からの直接の取り立てが止まります。
なぜなら、弁護士が依頼を受け、債権者に受任通知を発送することによって、貸金業者やサービサー(債権回収会社)は債務者に直接取り立てを行うことが法律上禁止されているからです。
そのため、精神的に余裕を持って、破産申立ての準備を行うことができます。
メリット② 必要書類に関する指示、申立書類の作成をしてくれる。
自己破産の申立てをする際には、申立書類一式を裁判所に提出する必要があります。
自己破産の申立書類を作成するには、用語の意味や手続きの内容を習得する必要があり、かなりの時間と手間を要します。
しかし、弁護士に依頼すれば、作成しなければならない書類の種類や記載方法を理解しているので、破産の申立書類をスムーズに作成してくれます。
資料の収集についても、弁護士が申立人の状況や各裁判所の運用を調査しますので、必要な資料について的確な指示を受けられます。また、各種の資料の入手方法なども弁護士に教えてもらうことができます。
メリット③ 同時廃止事件になる可能性が高くなる。
自己破産は、“同時廃止”と“管財事件”という2つの手続きに分かれます。
同時廃止とは、基本的に書面審査で手続きが完了する簡便な破産手続きであり、費用も比較的安く済みます。
管財事件とは、破産管財人が選任され、債権者集会が開かれるなどやや複雑な破産手続きとなり、管財人への引継予納金が必要となるなど費用も高額になってきます。
※同時廃止と管財事件の区別についてはこちら→「自己破産の手続きの流れについて教えて下さい。」
同時廃止は管財事件よりも負担の少ない手続きと言えますが、同時廃止となるには、①換価や配当に充てられる財産がないことや②重大な免責不許可事由がないことを申立書類でしっかりと説明しなければなりません。
そのため、知識と経験が豊富な弁護士に依頼し、自己破産の申立書類を作成してもらう方が同時廃止となる可能性が高くなり、依頼者の負担も軽くなります。
メリット④ 免責を得られる可能性が高くなる。
“免責”とは、自分の借金について返済する義務が免除されることをいいます。
自己破産の最終目的は、裁判所から免責について許可を受けることです。
しかし、破産法252条1項において、浪費行為などの免責不許可事由が定められています。この免責不許可事由がある場合には、自己破産によっても、借金の免責が認められない可能性が出てきます。
※免責不許可事由についてはこちら→「自己破産ができないケース(免責不許可事由)はどのような場合でしょうか?」
もっとも、免責不許可事由に該当する行為があったとしても、破産に至った経緯や本人の反省などを考慮し、裁判所が免責を許可することが相当であると判断した場合には、免責が許可されます。これを裁量免責といいます(破産法252条2項)。
そもそも、免責不許可事由にあたるかどうかについて、ご自身で正確に判断することは相当難しいでしょう。また、裁量免責と言われても、破産手続きを経験したことのない方からすると、見当がつきにくいものです。
弁護士に依頼することで、免責不許可事由にあたるかどうかについて正確な判断をすることができます。また、免責不許可事由があったとしても、弁護士が裁量免責を得るための具体的な方策を検討します。
弁護士に自己破産を依頼すると、上記のように多くのメリットがあり、本人の負担やリスクが軽減されます。
司法書士に依頼した場合はどうなる?
自己破産について弁護士に依頼する他に、司法書士に依頼するという方法もあります。しかし、弁護士と司法書士では次のような違いがあります。
1)書類代行はしてもらえるものの、代理人にはなれない。
自己破産を司法書士に依頼すると、代理人にはなれず、申立書類の作成のみ行ってもらうことになります。つまり、本人申立てと同じ扱いになります。
そのため、書類作成の手間は省けるものの、裁判所での手続きに出頭する場合には、司法書士は同席できず、本人ご自身が一人で対応しなければなりません。
管財事件であれば、債権者集会に本人だけで行くことになりますし、同時廃止であっても、口頭審査や免責審尋への出頭を求められた場合には、やはり本人だけで対応しなければなりません。
2)管財事件の場合、管財人への引継予納金が高くなる。
自己破産を管財事件で申し立てた場合、管財人への引継予納金を用意する必要があります。
その際、弁護士が代理人となって申立てをしている場合と本人申立ての場合では、引継予納金の金額が違ってきます。
・弁護士が代理人となって申立てをしている場合の引継予納金
→最低21万6000円以上
・本人申立の場合の引継予納金
→原則として最低50万円以上
司法書士に申立書の作成を依頼した場合は、基本的に本人申立と同じ扱いになります。そのため、司法書士が関与した管財事件の場合は、管財人への引継予納金が原則50万円以上になります(注1)。
注1)同時廃止から移行した管財事件に司法書士が関与した場合の管財予納金は、弁護士代理の場合とほとんど変わらない場合があります。
自分で自己破産する場合と弁護士代理のメリットのまとめ
弁護士に自己破産を依頼するメリットについて解説しましたが、いかがでしたでしょうか。
自己破産では、借金の返済に窮した人が生活の再建を図るために、裁判所から借金の返済を免責してもらうことになりますが、他方で、債権者は多大な不利益を被ることになります。そのため、裁判所や債権者を納得させるだけの書類や資料が必要です。
申立人本人が破産申立てをできないわけではありませんが、非常に時間と手間がかかります。また、誤った対応により、免責を許可されないということもあり得ます。
一方、弁護士に依頼すれば、負担とリスクが大きく軽減され、免責許可を得るまでスムーズに手続きを進めることができます。
自己破産によって借金生活から脱出するためには、自己破産に精通した弁護士に依頼することが理想的です。
借金の返済にお悩みの方、自己破産を考えていらっしゃる方は、是非、自己破産に強い弁護士にご相談ください。
(記事更新日 2024.11.29)