自己破産は2回目でもできるのでしょうか?|免責を許可してもらうための条件や自己破産が難しい場合の対処法も解説

「過去に自己破産をしているのですが、2回目の自己破産は可能ですか?」という質問をお受けすることがあります。

結論から申し上げますと、自己破産に回数制限はないため、2回目の自己破産は可能です。

ただし、2回目の自己破産をする際には、いくつかの条件を満たす必要があります。また、最終的に免責を許可するかどうかについて、裁判所から1回目の自己破産よりも厳しく審査されることになります。

そこで今回は、2回目の自己破産を検討されている方が知っておくべき条件や注意しなければならないこと、また、自己破産が難しい場合の対処法についてご説明します。

<目次>
1.2回目の自己破産ができる条件
 ① 前回の自己破産から7年以上経過していること
 ② 前回の自己破産と原因が違うこと(特に浪費が原因でないこと)
2.2回目の自己破産をする際の注意点
 ① 管財事件になる可能性が高くなる
 ② 費用や手間がかかる可能性がある
3.2回目の自己破産でも免責を許可してもらうためには?
4.2回目の自己破産が難しい場合の対処法
5.2回目の自己破産のまとめ

1.2回目の自己破産ができる条件


自己破産には回数制限はありませんが、2回目となると裁判所から厳しく審査されます。
そこで、まず2回目の自己破産ができる条件と、注意点について解説していきます。

①前回の自己破産から7年以上経過していること



2回目の自己破産をする場合には、原則として、前回の自己破産で免責決定が確定した日から7年以上経過していることが条件となってきます。

過去7年以内の2回目の自己破産は、免責不許可事由に該当し、原則として免責されないことになっているためです(破産法252条1項10号)。

なぜこのような制限があるかと言うと、自己破産は免責により借金を帳消しにできるという強力な効果を有していますが、もし、一度破産をしても、すぐにもう一度破産できるとなると、債権者の不利益が大きくなるし、債務者も安易に借金を繰り返してしまうなどモラルハザードを招いてしまう可能性があるからです。

※免責不許可事由の条文(破産法252条1項)はこちら→破産法 | e-Gov法令検索


7年以内でも裁量免責の可能性はある

免責決定が確定した日から7年が経過する前であったとしても、裁判所が2回目の自己破産に至った事情を考慮して、免責を与えることがやむを得ないと判断した場合には、裁判所の裁量によって免責が許可(裁量免責)される場合があります。

裁量免責とは、免責不許可事由があったとしても、債務者のさまざまな事情を考慮し、裁判所が免責(債務の免除)を許可できることを言います(破産法252条2項)。

たとえば、
1.生活費や医療費のために借金をしたが、病気で働けなくなり、借金を返せなくなってしまった場合
2.リストラにより仕事を失って、借金の返済ができなくなってしまった場合
などは、どうすることもできない特別な事情があると考えられますので、7年以内の再度の自己破産の申立てでも、裁量免責により借金が免除される可能性があるでしょう。


②前回の自己破産と原因が違うこと(特に浪費が原因でないこと)



今回の自己破産に至った原因が前回と同じ場合、裁判所から前回の自己破産について反省していないとみなされる可能性が高いため、免責を許可されるのが難しくなります。

1回目の自己破産であれば、ギャンブルや浪費などといった免責不許可事由があったとしても、裁量免責により免責が許可されることが多いでしょう。

しかし、再び競馬やパチンコにはまったり、収入に見合わない高価な物を購入するなどして借金を増やし、前回の自己破産と同じく、浪費によって2回目の自己破産に至った場合は、裁判所から裁量免責を受けることが難しくなります。

そのため、2回とも浪費が原因で借金を返済できなくなったような場合は、自己破産ができるのか、他の方法で借金を整理する方がいいかについて、弁護士に相談することが望ましいでしょう。


2.2回目の自己破産をする際の注意点


2回目の自己破産では、やはり裁判所から厳しい目で見られることは否定できません。
そのため、次のような点に注意すべきでしょう。

①管財事件になる可能性が高くなる



自己破産の手続きには、“同時廃止”と“管財事件”という手続きがあります。

同時廃止とは?

破産者の財産がほとんどなく、債権者(お金の貸主など)に配当できるような財産がないことが明らかな場合には、裁判所は、破産管財人を選ばないで、破産手続きの開始と同時に、破産の手続きを終わらせるという決定をします。

これを破産の「同時廃止」と言います。

同時廃止は基本的に書面審査で手続きが完了する簡便な手続きであり、費用も比較的安く済みます。

よって、できる限り同時廃止で自己破産の申立てをすることが、破産者にとっても負担が少ないと言えるでしょう。


管財事件とは?

「管財事件」とは、破産手続開始時に保有している財産が一定の基準額を超える場合(同時廃止の基準を超える場合)などに、裁判所から破産管財人が選任されて、破産管財人が破産者の財産を換価処分して、債権者への配当等を行う手続きを言います。

要するに、
① 破産者にある程度の財産があり、債権者への配当の可能性がある場合や
② 借金の原因に大きな問題(ギャンブルが著しいなど)がある場合には、
破産管財人が選任されて、管財事件になります。

管財事件の場合は、破産管財人が選任され、債権者集会が開かれるなどやや複雑な手続きとなります。

2回目の自己破産となると、所有している財産が少なくても、自己破産に至った原因や免責不許可事由の有無を調べるために、破産管財人が選任される管財事件となる可能性が高くなります。

管財事件では、破産管財人が選任され、財産の調査を受けたり、日々の生活について指導監督を受けることになります。また、破産管財人に引き継ぐ管財予納金(最低21万6000円)を準備しておく必要があります(大阪地方裁判所の場合)。

そのため、同時廃止よりも管財事件の方が破産する方にとって負担が大きい手続きになりますが、2回目の自己破産の場合は、1回目よりも管財事件になる可能性は高くなります。

2回目の自己破産では、同時廃止か管財事件になるかは、ケースバイケースですので、自己破産に強い弁護士に相談すべきでしょう。

※自己破産手続きの種類はこちら→“自己破産手続きの流れについて教えて下さい。|自己破産の種類(同時廃止と管財事件)についても解説”


②費用や手間がかかる可能性がある



2回目の自己破産ということで管財事件となった場合、弁護士費用に加えて、破産管財人の費用が必要になるため、同時廃止より費用がかかってきます。

さらには、管財事件となった場合、管財人との面談や裁判所で開かれる債権者集会への出頭が必要となり、労力の面でも負担が増します。

また、同時廃止であっても、免責を許可するかどうか裁判所が判断するにあたって、反省文や生活再建策の提出、集団免責審尋期日への出頭などが求められることもあります。

そのため、2回目の自己破産は、1回目よりも、費用や手間がかかる可能性が高くなることは否定できないでしょう。


3.2回目の自己破産でも免責を許可してもらうためには?


①やむを得ない事情があること



2回目の免責を認めてもらうためには、再び自己破産に至ったことについて、やむを得ない事情があると裁判所に納得してもらえるかが重要になってきます。

何度も申し上げているとおり、1回目と2回目の自己破産の原因がどちらもギャンブルや浪費などによるものである場合は、免責が許可されることは難しくなります。

しかし、例えば、1回目はギャンブルにはまって、借金が増えて自己破産したものの、2回目の自己破産は、真面目に働いていたところ、親の病気の治療や介護で借金をせざるを得なかったなどの事情がある場合は、やむを得ない事情があるとして、免責が認められやすくなるでしょう。


②真摯に反省していること



自己破産により免責が許可されると、破産者は借金の返済を免除されることになりますが、反面、債権者は債権を回収できなくなるという不利益を被ります。

自己破産は債権者に多大な迷惑や負担をかけることになるため、破産者は二度と自己破産をしないよう、十分に反省することが求められます。

それにもかかわらず、2回目の自己破産に至ったということは、裁判所から前回の自己破産について真摯に反省していないのではないかと判断されてもおかしくありません。

そのため、2回目の自己破産の手続きにおいては、きちんと反省していることが裁判官に伝わるように、真摯な態度で臨むことが大事になってきます。


③生活や家計を見直し、借金に頼らないようにする



自己破産の免責は、何度も簡単に認められるものではありません。

そのため、二度と借金に頼らないように、収入の範囲内で家計の支出を見直し、計画的に生活を立て直すことが大切です。

また、病気や失業などアクシデントがあった時に備えて、少しずつでも貯金をする習慣を身に付けると良いでしょう。


4.2回目の自己破産が難しい場合の対処法


1回目の自己破産の原因がギャンブルなどの浪費であり、再度、借金が増えた原因もギャンブルなどの浪費である場合、2回目の自己破産では免責が認められない可能性もあります。
このように2回目の自己破産が難しいと判断される場合には、次のような方法で借金を整理することが考えられます。


①任意整理による解決



任意整理とは、サラ金やクレジット会社と任意に交渉して、債務の返済総額や返済条件・期間を見直して和解をする制度を言います。

任意整理では、利息制限法の利息で引き直し計算をして、減額された元本の分割返済を約し、かつ、その元本の分割返済に当たっては将来の利息が付かないように和解することになります。

例えば、利息の引き直し計算の結果、借入元本が50万円残る場合、その50万円を毎月1万円ずつ50回にわたって返済することを合意し、その50回の分割返済中には利息が付かないことになります。

任意整理は法律で定められた手続きとは異なるため、免責不許可事由などはありません。

そのため、2回目の自己破産の場合やギャンブルによる浪費が重大な場合でも、任意整理を進めることに支障はありません。

任意整理は、安定した収入があり、利息や遅延損害金をカットできれば、借金返済の目途が立つような場合に利用を検討することができます。


②個人再生による解決



個人再生とは、住宅ローンを除く借金を5分の1〜10分の1に減額し(ただし、100万円未満には減額できず、かつ、破産となった場合の予想配当総額を下回ることはできない)、減額された借金を原則3年で分割返済する制度を言います。

個人再生には免責不許可事由がありません。浪費などの免責不許可事由がある場合でも、要件さえ充たしていれば、再生計画は認可してもらえます。

そのため、過去に自己破産の経験があり、2回目の自己破産では、ギャンブルなどの浪費により裁量免責さえも認められない可能性がある場合には、個人再生の利用を検討することが望ましいでしょう。


前回の自己破産の免責を受けた日から7年間は給与所得者等再生の申立てはできない

個人再生には、小規模個人再生と給与所得者等再生の2つの手続きがあります。

このうち、給与所得者等再生については、前回の自己破産の免責を受けた日から7年間は申立てができないことになっています(民事再生法239条5項)。

ただし、個人再生では小規模個人再生が利用される場合が多く、サラリーマンなどの給与所得者の方も、給与所得者等再生ではなく、小規模個人再生を利用することが多いです。

小規模個人再生については、前回の自己破産の免責を受けた日から7年以内であっても、申立てをすることに制限はありません。


2回目の自己破産のまとめ


いかがでしたでしょうか?

一定の条件を満たせば、2回目の自己破産の申立てであっても、免責決定を受けることは可能です。

しかし、1回目の自己破産に比べ、裁判所から厳しい審査を受けることになり、手続きや費用といった面で負担が大きくなります。

そして、何より、2回目の自己破産で最終的に裁判所から免責の許可を受けるためには、再度の自己破産についてやむを得ない事情があったと裁判官を納得させることや、借金が増えた原因を振り返り、真摯に反省していることが重要になります。

これらを踏まえて、2回目の自己破産が難しいようであれば、自己破産以外の手段(任意整理や個人再生)を検討してみるといいでしょう。

いずれにせよ、自己破産や債務整理の手続きには、専門的な知識と経験が必要になります。

そのため、借金でお悩みの方は、まずは借金問題に強い弁護士に相談することをおすすめします。

(記事更新日 2025.6.20)

この記事の監修者
弁護士 白川 謙三

弁護士 白川 謙三(大阪弁護士会所属)
大阪・北浜の平野町綜合法律事務所代表
弁護士22年目。債務整理、自己破産、個人再生、過払い金請求などの解決事例多数。
ご相談に真摯に耳を傾け、ご希望の沿った解決をサポートします。借金問題のご相談は無料ですので、ぜひお気軽にお問合せください。

↑ページトップに戻る↑

大阪で自己破産のご相談はこちら、自己破産に強い弁護士・平野町綜合法律事務所